「ICT活用にはどんな心構えをすべきか」日建連の講演など、ヒューマンタッチ総研セミナー:産業動向(3/3 ページ)
ヒューマンタッチ総研は、「建設業界のためのICTを活用した生産性向上セミナー」を開催した。セミナーでは、独自の市場調査レポートや現場で必要とされる通信ネットワーク、外国人材活用のノウハウなどをテーマにした各種講演が行われた。
ICT導入だけでなく、仕事のやり方の変革も
杉浦氏の講演では、例えとして日本のタクシーと、Uberとの違いを緑色と黄色のグラフで示し、「人を連れていくのは同じだが、既存のタクシーで生産性を上げるには限度がある。Uberをはじめ、ホテルの価値を一変させたAirbnbの様な新たなデジタル化の流れは、建設業界にもICTの導入として置き換えられることができ、“破壊的イノベーション”として劇的に生産性を向上させる。だが、イノベ自体を採り入れることが重要なのではなく、既成概念から脱して、考え方も変えることが大切だ」。
建設業では、作業を見直して密度の濃い仕事を行う「カイゼン」は得意だが、既成概念を変えることは不得意。新技術をせっかく導入しても、仕事のやり方を変えなければ生産性に寄与することはできない。建設業にとって得意分野と不得意分野の相乗効果で、生産性向上を目指すべきだとした。
また、2019年6月7日に「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」が成立したことに触れ、「ICTの導入が進んでいるが、国はここに来て本腰を上げ、法律を改正し、ICT活用は発注者・受注者の責務と明記した。7月11日に開催されたICT導入協議会では、全面的活用を見込み、技術基準類も策定された。レギュレーションが変わるのはチャンス」と述べ、ICT活用の一例として、ドローン測量のフローやICT建機ではできない側溝工事で使うAR水糸などを紹介。杉浦氏は、「生産性の活用は人に言われて行うのではなく、“自ら進めるもの”。いま生産性向上に取り組まなければ手遅れになる」と促した。
BIM/AI活用には、海外エンジニアが有効
第4部では、グループ全体で派遣事業を担うヒューマンリソシアのGIT事業本部 本部長の大西利夫氏が、海外エンジニアの活用施策とそのポイントと題して、外国人材活用のノウハウを説明した。
2011年ごろから大手建設会社の海外展開が加速傾向にあり、ここ最近はルーマニア、ハンガリーといった東欧でも受注額は拡大している。
国内では2020東京大会、2027年のリニア開通に伴う大規模再開発などが控えているが、少子高齢化に伴い、人手が全く足りなくなることが確実視され、国を挙げてICT活用による生産性の向上が叫ばれている。建設技術者と同様に、ITエンジニアも、需給バランスが崩壊することも予想されており、経済産業省の試算では2030年に約79万人も足りなくなる。
解決策として、大西氏は「即戦力の活用と中長期視野での人材育成の併用施策が必要」とし、とくに外国人労働者は「2017年時点で約128万人とどまっており、余地がまだまだある」とした。
こうした状況を踏まえ、ヒューマンリソシアは、海外ITエンジニアの日本誘致型事業「GIT(Global IT Talent)」を立ち上げ、これまでに35カ国で670人の採用を行ってきた。建設業界向けには、およそ70人がゼネコンや設計会社に派遣され、RevitでのAPIプログラムソースの改良や施工ロボットの開発、AutoCADを使用した図面作成、AI開発業務のプログラミングなどを担当しているという。
最後に大西氏は、海外人材活用によるメリットとして、「不足する人材の代替が一番の目的にはなるが、事業・組織の活性化、寛容性向上、若手人材の刺激剤といった副次的な効果ももたらされる」として、積極的な採用を求めた。
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