鹿島が450現場で運用開始した入退場管理システム、技能者の過不足まで“見える化”
鹿島は、建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携させる入退場管理システムの運用を開始した。独自に開発した「EasyPass」というシステムで、全国の土木・建築に関わる約450の現場で従業員の入退場時間を管理する。労務実績が見える化され、現場だけでなく、事業所で技能者の過不足がリアルタイムで把握できるなど、さまざまな管理方法に転用することが見込める。
鹿島建設は2019年3月20日、建設キャリアアップシステム(CCUS)と連携させる予定の入退場管理システムの運用を開始したと発表した。
現場管理システムは、独自開発の「EasyPass」で、全国の土木・建築に関わる約450の現場で従業員の入退場時間を管理する。システムを運用することで労務実績が“見える化”され、現場だけでなく全国の事業所で職種ごとの技能者の過不足がリアルタイムに把握でき、効率的な運営が図れるなど、他の管理にも応用できる可能性が見込める。CCUSの本格運用に先立つ取り組みで、業界を挙げた機運の醸成に弾みをつけそうだ。
労務データを一元的に“見える化”
CCUSは、国土交通省や建設業関係団体など、官民一体で準備を進める技能者の資格、社会保険加入状況、現場の就業履歴などを横断的に登録・蓄積する仕組み。システム活用により、技能者が能力や経験に応じた処遇を受けられる環境を整備し、将来にわたって建設業の担い手を確保することを目的としている。2019年度より本運用を開始する予定で、初年度で技能者100万人の登録を目標に掲げる。
鹿島建設が考案したシステムの構成は、各現場に設置されるカードリーダーとEasyPass本体、そして2019年4月に本運用を開始するCCUSの3点だ。CCUSに登録された各個人は「建設キャリアアップカード」が付与されるため、現場の入退場時にカードをカードリーダーにかざしてデータを記録する。記録されたデータは、入退場に関わる作業場所や職種・立場など。
データは暗号化され、カードリーダーから4G(LTE)回線を通じてEasyPass本体に自動で送られる。EasyPass本体はシステム連携(API連携)したクラウド上のCCUSに、自動でデータを送信し、登録が完了する。EasyPass用に開発したリーダーは電源供給のみで使用でき、通信設備やPCなどを追加で設置する必要がない。
システムの運用は、建築工事301件と土木工事154件の現場でスタート。CCUSとの連携に際し、アートサービス(神奈川県川崎市)が提供するシステムを採用した。同社を中心としてEasyPassの販路を形成し、鹿島建設だけではなく、企業を横断した利用を目指していく。
鹿島建設では、さらにシステムを活用して、労務データを一元的に見える化することで、事業所運営の効率化も図る。現場だけでなく、本店や支店でも、職種ごとの技能者の過不足をリアルタイムに把握できるため、業務改善にも効果が見込まれる。
また、別の現場内の位置情報や個人の健康情報をリアルタイムでデータ取得するセンシング技術と、EasyPassの入退場データを組み合わせることで、技能者の安全を遠隔管理する取り組みも進める。将来的には、CCUSによる「技能とキャリアの見える化」にとどままらず、「事業者の施工能力の見える化」までを目指し、建設生産プロセス全体の効率化につなげる狙いだ。
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