三井共同建設コンサルタントら3社、河川の氾濫状況の予測システムを開発:河川管理
三井共同建設コンサルタントと京都大学防災研究所、NECの3社は、降雨を入力として河道流量から洪水氾濫までを解析できる「RRIモデル」を用いた全国版リアルタイム氾濫予測システムを開発した。
三井共同建設コンサルタントと京都大学防災研究所、NECの3社は2019年6月28日、降雨を入力として河道流量から洪水氾濫までを解析できる「RRIモデル」を用いた全国版リアルタイム氾濫予測を実現可能にしたと発表した。
「全国版リアルタイム氾濫予測システム」は、地形データなどを基に日本全国を4秒メッシュの解像度(約120メートル×100メートル)に分割し、リアルタイムの雨量データを用いて河川の増水や氾濫状況を予測するシステムだ。中小河川を含む全国の河川を対象に、災害発生の危険性を察知する河川水位の予測のみならず、越水後の氾濫状況までをリアルタイムに予測でき、Webブラウザで情報をチェックできる。
同システムは、気象庁が配信する高解像度降水ナウキャストや、国土地理院が提供する国土数値情報などのオープンデータを活用して演算を行っている。各河川のモデル精度を向上するため、地域の情報を精査し、個別に改善を図る必要があるが、リアルタイムに稼働する全国版氾濫予測のプラットフォームが整備できたとしている。現段階では大量のデータを高速に処理する必要があることから、1時間先までを予測する運用を行っている。しかし今後はNECのベクトル型スーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」を活用し、6時間先までを予測するリアルタイム稼働ができる見込みだ。
近年、地球温暖化に伴う異常気象は全国各地で洪水を発生させ、「平成30年7月西日本豪雨」「平成29年7月九州北部豪雨」「平成28年8月北海道・東北豪雨」「平成27年9月関東・東北豪雨」など、毎年のように氾濫被害をもたらしている。全国各地で起こりうる想定外の氾濫に対して、地域の安全・安心を確実にしていくためには、特に情報の少ない中小河川においても、いち早く危険性を察知し氾濫の状況を推定できることが望まれる。これらの実現のために、全国版リアルタイム氾濫予測システムの研究を進めているという。
三井共同建設コンサルタントら3社は、技術が有効に活用できるよう防災担当者向け情報提供サービスへの展開を検討している。
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