国交省が検討している河川・港湾のドローン点検の課題と将来像:第2回ドローン×インフラメンテナンス連続セミナー(1)(1/3 ページ)
インフラメンテナンス国民会議は2018年9月14日、第2回となる「ドローン×インフラメンテナンス」連続セミナーを東京・千代田区の中央合同庁舎で開催した。2018年5月の初開催に次ぐ2回目の今回は、ドローン技術のニーズとシーズのマッチングに向けた自治体の取り組みと課題の共有、会員企業の製品やサービスを紹介した。
急速に進むインフラ老朽化に対し、産官学民が連携して取り組むプラットフォーム「インフラメンテナンス国民会議」は、第2回の「ドローン×インフラメンテナンス」連続セミナーを2018年9月14日に開催した。本稿では国土交通省がインフラメンテナンスでのドローン活用について、どういった取り組みを進めているか、またこれからの将来像についてまとめる。
冒頭、国土交通省 総合政策局 公共事業企画調整課 事業総括調整官・吉田邦伸氏があいさつ。吉田氏は、「初開催となった5月の他分野におけるドローンの開発・活用状況を学ぶ機会に続く、2回目の開催となった。国交省では、インフラメンテナンスをインフラの付加価値を加えることに加え、地域を守り将来への発展につながる重要な要素と捉えている。そのためにも、メンテナンス業務を効率化する目的で、新しい技術を積極的に取り入れていきたい」とドローン点検への期待を語った。
なかでも、ドローン技術については「技術・産業としての進歩が著しく、いち早く取り入れ、現場への実装を目指したい領域。今回のセミナーでは、ドローンの実用化・普及を進めるために解決すべき課題や改善策を探る。点検で使うに至っていない事例と十分使える事例のギャップを共有し、どのようなイノベーション・マッチングが必要なのかを考え、この場が産官学民の“化学反応”につながることを期待している」と語った。
河川管理の巡視と点検でドローンを活用
国土交通省の現状での取り組み報告ではまず水管理・国土保全局 河川環境課 河川保全企画室の担当係長が、河川におけるドローン活用について説明した。
河川は上流・中流・下流といった場所や地形・地質などの諸条件で、形状や形態が大きく異なる。河道内の土砂堆積や樹木の繁茂状況などは、河川や地域固有の特性があり、河は常に変化するところが、他の構造物などと違う。
こうした河川の特徴を踏まえ、河川の維持管理は、日常的な状態把握が不可欠で、「巡視」「点検」の2つの方法で毎日管理を行っている。巡視は、平常時に定期的・計画的に河川を巡回し、異常および変化などを発見して概括的に管理する。洪水時には、刻々と変化する状態を概括的に把握し、適切な措置を迅速に行っている。
点検では、高さ・形状を維持するべき堤防は、雨で削られていないか、堤防を破堤させることがないかなど、微細な変化をチェックする。河道の点検では、土砂堆積や樹木の繁茂などにより、変化は一様ではなく、ときに急激に変化するため点検が日々必要とされる。河川巡視、点検は、日々見回りが必要となるため、作業員やコスト面を考慮して効率化させることが求められている。
現在のドローンを活用した河川の点検は、洪水・地震後の緊急・臨時の点検・調査が主に行われている。2017年九州北部豪雨や記憶に新しい2018年7月の西日本豪雨では、浸水状況と排水作業などによる解消状況、堤防決壊の復旧状況などをドローンで確認した。
災害以外では、現場ニーズに基づき、要求水準(リクワイヤメント)を明示し、官主導による“オープンイノベーション”で、「革新的河川技術プロジェクト」が進められている。危機管理型の水位計、陸上・水中レーザードローン、全天候型ドローンの3つの技術開発を約1年間の短期で、実装に向け動き出している。危機管理型の水位計は、洪水時の水位観測に特化した低コストの水位計の実用化を目指し、機器の小型化・通信コスト縮小でコスト低減を実現させ、全国約8700カ所に設置を順次進めている。
水陸ドローンは、搭載機器を軽量化し、低空からの高密度計測を可能にした。現在のドローンが苦手とする植生下や赤色レーザーによる水面下の測量をクリアにし、3次元データによる変状把握など管理を高度化することに成功した。水面下はグリーンレーザーを搭載し、自律自動航行により、一旦ルートを設定すれば繰り返し測量できる。
全天候型ドローンは実証段階にあり、風速20m(メートル)の強風下でも、降雨時や強風時でも飛行可能という。2018年7月の西日本豪雨では、導入済みの北海道開発局と近畿地方整備局で、天候の回復を待つことなく機動的に現地調査を行った。
これからの目標としては、「実証実験段階として、自動飛行モードによる夜間の抑止にもつながる不法投棄ゴミの監視、さらには河川に架かる橋などの許可工作物の適正な管理にもつなげたい。細く長い河川は効率化が求められ、見た目だけでは分かりにくい変化をドローンによる点検でカバーしていく」とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.