安全体験VRで重篤災害の多発する“トンネル掘削工”のコンテンツを開発、戸田建設
戸田建設は、VR技術を活用したトンネル工事を対象にした安全教育ツール「バーチャルNATM」を開発した。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に投影した空間内を、専用のコントローラーを使って自由に行動し、安全巡視を体感する。さらに、臨場感のあるVRの中で事故を発生させる不安全行動や不安全状態、トンネル内で想定される災害に巻き込まれた状況も体験でき、危険予知能力や安全意識の向上を図ることができる。
戸田建設は、VR技術を活用した安全教育ツール「バーチャルNATM」を開発した。トンネル工事の一連の流れを体感する安全教育システムで、トンネル掘削の一般的な手法である“NATM工法”の現場を仮想空間に3D-CGで再現した。
通路編、覆工編、インバート編、切羽編の4種類を用意
トンネル工事は、限られた空間の中で、常に大型機械を使用して作業を進めるという作業形態から、重機事故や肌落ち、崩落事故などの労働災害が多く潜んでおり、重篤な災害に発展する危険性も高い。そのため、安全管理について万全の対策を期することが求められている。
これまでに、高所作業やクレーンなどの重機を使うフィールドで、VR体感型の安全教育コンテンツは開発されてきたが、トンネル工事の一連の流れを体験できるものはなかった。
戸田建設が開発した「バーチャルNATM」は、トンネル掘削の一般的な手法であるNATM工法の現場を3D-CGで再現。ユーザーは、HMDを装着し、仮想空間上のトンネル工事現場を専用のコントローラーで自由に歩き回る。体験者は、設定されたシナリオに沿ってトンネル工事の不安全行動や不安全状態を指摘(安全巡視)していく。不安全箇所を発見した場合も、コントローラーでチェックする。
体験者自らが不用意な不安全行動をとると、トンネル坑内で起こり得る労働災害に巻き込まれるなど、ヒヤリハットが疑似的に体験できる。自身の身に起こった体験的学習によって、危険を予知する知識の着実な習得や安全意識の向上につながる。
学習シナリオは、トンネル作業における通路編、覆工編、インバート編、切羽編の4つの作業区分で構成。シナリオ作成、編集には、トンネル工事技術者の実体験を参考にしたという。
また、体験者が着けるヘッドマウントディスプレイの画像は、専用PCで常時モニタリングできる。第三者が疑似体験の状況を客観的にチェックすることで、安全巡視の不備や、不安全行動を指摘するなど、安全教育の効果を高められる。
トンネル内の労災撲滅には、施工機械の高度化と併せ、実際に坑内作業に従事する作業員・職員への安全教育の充実も不可欠だ。戸田建設は、バーチャルNATMを全てのトンネル現場で活用していく方針だ。
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