君津製鉄所の社員寮をフルスペックの「NSスーパーフレーム工法」で更新:新工法
日本製鉄は、独自開発のスチールハウス工法「NSスーパーフレーム工法」をフルスペックで採用し、君津製鉄所の大和田社宅の更新整備を進めている。同工法は、短工期で安定的な品質を備えるなど、高い技術競争力を備える。
日本製鉄は、独自開発のスチールハウス工法「NSスーパーフレーム工法」を君津製鉄所大和田社宅の更新工事に採用した。施工はグループ会社の日鉄テックエンジが担当している。
大規模な4階建て建築に国内で初適応
国内で初めて適用した工事の名称は、「大和田住宅(その3)案件」。4階建て3棟、3階建て1棟の住戸数212戸を建て替える。建築面積は約5800平方メートルで、総延べ床面積は1万8000平方メートル。鋼材はスーパーダイマを約800トン使用し、2018年11月の着工、2019年12月末に完成する予定だ。
今回採用したNSスーパーフレーム工法は、薄板で製造した形鋼と、構造面材を組み合わせたパネルで建設するパネル工法の一種。耐防火性能、温熱性能(環境性能)に優れる他、品質も安定しており、建設現場での工期が短く済むなど、担い手不足の課題を解決する工法としても注目されている。
さらに、日本製鉄では、名古屋工業大学の小野徹郎名誉教授、佐藤篤司准教授の協力を受け、構造面材に鋼板を使った「高強度耐力壁」をNSハイパーツと共同開発した。
今回の大和田社宅では、高強度耐力壁を大判化させるべく改良。併せて、「耐力壁最適配置設計システム」と接合部の各種合理化アイテム(鋳造ホールダウン金物、せん断アンカーピン、圧縮受金物)などを新たに開発して盛り込むなど、現時点でのNSスーパーフレーム工法をフルスペックで適用した。
高強度耐力壁の大判化では、従来の幅455ミリから910ミリと拡張。NSスーパーフレーム工法の4階建てでは、耐力壁の構造面材にバーリング孔加工を施した鋼板を使うが、加工設備を増強し、部材評定を新たに取得したことで大判化を実現。大判化によりパネル製造が簡素化された。
耐力壁最適配置設計システムでは、耐力壁の最適配置を決める設計ソフトを開発し、最適化計算を自動化。これにより、構造計算の時間が大幅に短縮され、耐力壁の数量も過不足なく最適に配置できる。
各種接合部の合理化アイテムでは、より強固な接合を求められる4階建てスチールハウスを合理的に施工する新たな部材を開発し、性能評定を受けた。従来は複数の鋼板を溶接して組み立てていた金物を、鋳造一体化した「鋳造ホールダウン金物」やせん断アンカーを後施工化する「せん断アンカーピン」を実用化し、施工誤差を解消するための特殊金物(位置合せ金物)を不要にした。
圧縮力受金物は、3階建て用に開発した接合金物(バイパス金物)に付加することで、高軸力が求められる4階建ての耐力壁たて枠にも対応でき、安価に製造できるメリットがある。
日本製鉄は2014年に、同工法の4階建て構造評定を取得。2015年には、大分製鉄所の明野住宅1棟(24戸)の建築で初めて採用した。2016年に更新整備を開始した大和田社宅でも、2017年までに竣工した2棟(100戸)に導入している。
短期間での現場施工というNSスーパーフレーム工法の特徴を生かして、日本製鉄では、高度経済成長期に建てられた集合住宅の建て替えニーズ、企業の社宅・独身寮、高齢者向けの施設など、幅広いインフラ整備に活用していく考えだ。工法の各技術についても、プレハブメーカーやゼネコン向けの部材開発、非住宅分野の建築物への応用を進めていく。
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