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人と環境に優しい低VOC材、日本でLEED・WELLのクレジット取得率が低い理由基礎から学ぶ「グリーンビルディング認証」(4)(3/4 ページ)

建築物の環境性能を評価する認証制度には、さまざまな種類がある。その1つであり、国際的な認証制度として普及が進んでいるのが「LEED認証」だ。本連載では一般社団法人グリーン ビルディング ジャパンのメンバーが、こうしたLEEDをはじめとする「グリーンビルディング認証」の概要や、取得のための仕組みを解説する。第4回で最終回となる本稿では、LEEDおよびWELL認証における低VOC放散評価とGREENGUARD認証について解説する。

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需要と供給、双方にとって望ましい「低VOC材」評価とは

 現在低VOC化が急速に進む建材業界において、ホルムアルデヒド以外の物質は国内基準にないとはいえ、含有を低減し基準値をクリアすることは、「不可能」ではないだろう。どちらかと言えば、足かせになっているのは低VOC材調達における運用面での不備であると思われる。

 その1つの解決策として、試験を受けるだけではなく、その結果を利用して「認証」を取得してしまうことが考えられる。第三者評価機関UL(Underwriters Laboratories)社の提供するGREENGUARD認証というプログラムで認証を発行するケースを想定して、話を進めよう。

 この方法の最大の利点は「代表サンプルの認証試験で、『類似組成のシリーズの製品群を一度に』低VOC材として認証発行できる」ことにある。つまり、1つの製品群にあるそれぞれの製品に対して24時間の簡易な予備試験を実施し、その結果によって代表サンプルを選び出す。代表サンプルを認証試験(本試験)して、基準値を満たしたら、その結果を利用して同製群の製品をすべて「低VOC材」と見なしてもらえるようになる。製品群中の製品が多ければ予備試験の費用は掛かるものの、認証試験費用や認証費用は製品群として1つの費用しか掛からない。先述の「試験のみ」の場合と比較すると、確かに認証に伴う費用は発生するものの、類似製品が多岐に及ぶ場合はかなり効率的だ。

 また認証取得のもう1つのメリット、それは認証されると検索データベースに掲載できるため、その後の他のLEEDプロジェクトにおいても調達品の候補となれる点だ。このデータベース「UL SPOT Product Database」はLEEDクレジットの情報と連動しているため、LEEDにおける評価分野・クレジットにて有効な製品を絞り込んだ上で、製品群ごとに情報を確認することができる。よって、材料を採用する側は、LEEDプロジェクトを進める際に、獲得クレジットを想定しながらデータベースに登録された製品から調達の候補品を選定できるのである。

 認証取得と試験のみ、それぞれの方法の特徴をまとめたものを図4に示す。


図4 LEED認証中の低VOC材評価における試験・認証の特徴。(※1) TVOCは合否判定の基準には含まれないものの、LEED認証の要求上TVOC測定および結果の報告は必須。(※2) UL社の運営する「UL SPOT Product Database」を指す(クリックで拡大)

「試験のみ」が推奨されるケース

  • 最小限の費用で、特定の製品をLEED認証にて低VOC材として使えるようにしたい場合
  • より少ない化学物質の数を基準に用いて、合格を確認したい場合

「認証取得」が推奨されるケース

  • シリーズ製品が多数ある場合
  • 今後LEED認証に低VOC材として広く使えるようにしたい場合

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