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人と環境に優しい低VOC材、日本でLEED・WELLのクレジット取得率が低い理由基礎から学ぶ「グリーンビルディング認証」(4)(4/4 ページ)

建築物の環境性能を評価する認証制度には、さまざまな種類がある。その1つであり、国際的な認証制度として普及が進んでいるのが「LEED認証」だ。本連載では一般社団法人グリーン ビルディング ジャパンのメンバーが、こうしたLEEDをはじめとする「グリーンビルディング認証」の概要や、取得のための仕組みを解説する。第4回で最終回となる本稿では、LEEDおよびWELL認証における低VOC放散評価とGREENGUARD認証について解説する。

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GREENGUARD認証を取得するには?

 認証を取るメリットについては、ご理解いただけたと思う。では、GREENGUARD認証を取得するための具体的な手順を紹介する。

 GREENGUARD認証では、類似製品への24時間の簡易試験にて選出された代表サンプルのみ、本試験が要求されることは前述の通りである。本試験の方法は「カリフォルニア・セクション01350」と同じく336時間のチャンバー内の空気捕集試験であるが、168時間(7日間)の試験にて、336時間(14日間)後の値を推定する事が許されている。

 また、特徴的なのはその結果が比較されるべき、VOCの基準である。GREENGUARDでは、300を超える数の化学物質に対して基準値を満たさなくてはいけない[5]。さまざまなVOCが数多く列挙されているが、この合否が決まる基準の中にTVOC(総揮発性有機化合物:Total VOC)があることも特徴である。

[5]GREENGUARD認証の基準

 この基準の設定目的は、「代替物質」を制限することにある。つまりいくら個々の列挙されたVOCの値が基準値以内でも、それに準じた類似の化学物質が大幅に含有してしまっていると、健康被害は根本的には防げない。GREENGUARDでは、化学物質の総和も基準に設けることで、より良い空気質を担保しようとしているのだ。

 また試験以外にも、工場監査が要求される。これは、製品が一定の品質基準に沿って生産されているか、ロットごとにVOC放散量のばらつきが起こる可能性がないか、を確認することを主な目的としている。

 こうして合格が確認され、認証が発行された後は、年次で更新審査が必要となる。登録製品群の中から抜き取りが実施され、その製品の試験結果が継続して基準を満たしているか、確認する必要がある。このように認証を取得・維持するには、継続した費用負担や、より多角的な基準への適合が必要となることは留意の必要がある。

オープンな議論の必要性

 さて、LEEDおよびWELLというグリーンビルディング認証について計4回に渡って連載を行い、概要から詳細なクレジット例における評価内容までを網羅し、説明した。

 建物を「建築物」として評価するLEEDに始まったグリーンビルディング認証は、今や建物を含める空間を「人が過ごす時間の質を決めうるもの」として、WELLにおける広がりを見せ始めている。その普及については「多言語化」や「国・文化の特徴の評価への親和性」、「効率的な申請・認証スキームの開発」など課題もあるものの、多くの業種・立場が関わるからこそ、全員が当事者としてオープンな議論に参加することが求められていくであろう。この連載を通じて、より多くの、そしてさまざまな立場の方に、グリーンビルディングというものに興味を持っていただけたなら幸いである。

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