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人と環境に優しい低VOC材、日本でLEED・WELLのクレジット取得率が低い理由基礎から学ぶ「グリーンビルディング認証」(4)(2/4 ページ)

建築物の環境性能を評価する認証制度には、さまざまな種類がある。その1つであり、国際的な認証制度として普及が進んでいるのが「LEED認証」だ。本連載では一般社団法人グリーン ビルディング ジャパンのメンバーが、こうしたLEEDをはじめとする「グリーンビルディング認証」の概要や、取得のための仕組みを解説する。第4回で最終回となる本稿では、LEEDおよびWELL認証における低VOC放散評価とGREENGUARD認証について解説する。

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低VOC材の基準値および調達が背景に

 では、なぜ日本ではLEEDにおける低VOC材のクレジット取得率が低いのだろうか。主な理由を2つ示す。

 1つ目の原因として、日本の一般的な建材基準と、LEEDにおける「低VOC」基準のギャップが考えられる。LEEDの中で、建材の低放散材料の確認方法として挙げられているのが、「カリフォルニア・セクション01350」と呼ばれる米国カリフォルニア州公衆衛生局の試験規格だ。カリフォルニア・セクション01350、正式名称「Standard Method for the Testing and Evaluation of Volatile Organic Chemical Emissions from Indoor Sources Using Environmental Chambers, Version 1.1 (2010)」では、チャンバーといわれる密閉容器の中にサンプルを入れ、換気をしながら空気捕集をすることで、製品から揮発してじわじわと放散されるVOCの時間経過を336時間(14日間)測定する。その336時間後の放散量が、CDPH Standard Method v1.1-2010の基準値(図3)として定められた35種類のVOC全てで下回らなければならない。


図3 CDPH Standard Method v1.1-2010の基準値[4](クリックで拡大)

[4]CDPH Standard Method v1.1-2010の基準

 この35種のうち、日本の建築基準法で制限されている物質は「ホルムアルデヒド」ただ1種類である。つまり、日本国内市場においてクリアすることが求められている基準を守るだけでは、LEEDにおける「低VOC」の基準をクリアできないのである。

費用対効果にも課題

 またもう一点、国内で低VOC材のクレジット取得率が低いことの原因として挙げられるのは、費用対効果の問題である。

 仮に基準値を満たしている建材があったとする。しかし建材は同じメーカーの同じシリーズでも、その色味などによって化学物質の調合は異なり、品番も無数に存在する。LEEDのプロジェクトのために特定の製品で一度試験を受け、基準をクリアした製品があったとしても、次のプロジェクトにおいて全く同じ品番が選定される可能性は極端に低い。

 つまり、せっかく試験を受け、国内には無い基準にクリアし、その建材がLEEDの「低VOC材」として使用可能であっても、建材メーカーはその機会を生かしきれない状況にあるのである。

 これらのような理由から、「基準を満たしていることを示すデータを、建材メーカーによって提出してもらう」というハードルを越えられず、国内のメーカーからの低VOC材の調達はとても困難な状況にある。そのために、国内のLEEDプロジェクトにおいて低VOCクレジット獲得は失敗に終わることが多いのである。

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