不夜城と呼ばれた千葉の地場ゼネコンが「ニコニコ帰れる日」を実現するまで 建設DX15年の道のり:地場ゼネコンのDX(2/5 ページ)
千葉県成田市に本社を置く地場ゼネコンの平山建設は、2011年のGmail導入以降、約15年にわたりデジタル技術の活用による業務改革を進めて来た。工事部の平均残業時間は月40時間超から26時間へ減少した一方で、平均年収を170万円以上引き上げた。平山建設 代表取締役社長 平山秀樹氏らに業務改革の歩みを聞いた。
「鈴木課長がニコニコ帰れる会社」をどうつくったか
平山建設は2018年、長時間労働の改善に向けて社内横断の「働き方改革委員会」を設置し、残業を削減するための議論を重ねていた。しかし当初は目に見える成果につながらず、平山社長は社員から「何をやっても変わらない」と不満をこぼされたこともあった。
転機となったのは同年、Google Workspace(旧G Suite)の活用を支援するコンサルタントの平塚知真子氏との出会いだった。平塚氏を招き、働き方改革委員会の主要メンバーが参加する研修会を開催。稟議の電子化や脱ハンコに着手するとともに、各部門にはITに詳しい社員を「Google先生」として配置し、新しいツールの操作で困った社員を身近な同僚が支援する体制を整えた。
研修会で、働き方改革の目標として掲げたのが「鈴木課長が毎日ニコニコ帰れる日を目指そう」だった。当時は多くの建設会社がそうだったように、平山建設でも長時間労働が常態化し、同業他社から「本社の前を通るといつも電気がついている不夜城だ」と評されたこともあった。鈴木氏も当時、工事部の課長として施工管理業務に忙殺され、深夜まで会社に残る生活が続いていたという。
改善に向けて現場の業務を洗い出した結果、施工管理者の時間を大きく奪っていたのは、「電話」「移動」「手戻りへの対応」だと分かった。平塚氏の助言を受けながら業務改革を進め、社内のコミュニケーションを電話やメールからGoogle Chatへ移行し、図面や工程表、写真、議事録などはGoogle ドライブに集約。「信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth/SSOT)」と位置付け、常に最新の情報を参照できる状態をつくった。
また、プログラミング不要でWebサイトを構築できる「Google サイト」を使って現場ポータルサイトを構築し、Google スプレッドシートで作成した工程表や地図、図面、協力会社向けの資料などを1つのページに集約した。元となるスプレッドシートを更新すれば、関係者全員が同じ最新情報を共有できる仕組みだ。現場にはChromebookを設置し、職人や職長がその場で工程や図面を確認できる環境も整えた。
当初、こうした取り組みは特定の現場にとどまっていたが、2020年以降のコロナ禍を契機に全社へ広がった。現場間の移動や対面での打ち合わせを減らす必要が生じたことで、Web会議システムGoogle Meetやチャットを活用したコミュニケーションが一気に定着した。
仕組みをつくるだけでなく、社員への地道な支援も続けた。デジタルツールの利用に難色を示していた60代の社員には、担当者が現場まで足を運んで操作方法を教えたという。20代の新入社員から70代のベテランまでがチャットやスプレッドシートを使えるようになるまで根気強いサポートを重ねた。
施工管理者の仕事そのものも見直した。施主や協力会社との調整、品質/安全管理に加え、工程表の更新や行政への提出書類作成など施工管理者は多くのデスクワークを抱えていた。そこで本社に「働き方改革課」を設置し、施工管理者が現場で担っていた書類作成や事務作業を切り分けて本社側へ集約。施工管理者が、現場でしかできない判断や管理に集中できる体制を整えた。
改革の成果は数字にも表れている。2011年のGmail導入から15年で、工事部の平均残業時間は月40時間超から26時間へ減少し、全社平均も約15時間となった。その一方で、社員数は約40人から86人へ増加、単体の売上高は20億円台から70億円超へ成長した。現在の社員の平均年齢は39歳、平均年収は500万円以下から670万円へ上昇した(2025年1〜12月の実績)。
Google Workspaceを導入したから、直ちに残業が減ったわけではない。仕事の流れそのものを設計し直した結果として、デジタル技術が効果を発揮した。
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