3Dプリンタで木の質感の壁面制作 カーデザイナー山本卓身氏のデザインをTOKYO ROOMS展で具現化:デジタルファブリケーション(2/2 ページ)
大型3Dプリンタ開発のExtraBoldは、虎ノ門ヒルズで開催中の展覧会で、カーデザイナーの山本卓身氏が出展した空間作品の制作に携わった。ExtraBold 代表取締役 原雄司氏に、造形/製作のポイントや3Dプリント技術の建築/内装分野への展開可能性について聞いた。
大型3Dプリンタと協働ロボット型3Dプリンタの2台で製作
プロジェクトはフランス在住の山本氏と、オンライン中心で進行した。原氏は今回の展示について「山本氏の人生やデザイン観を1つの部屋空間として表現。鑑賞する角度によって印象が変わるように3Dデータで設計検討を重ねた」と説明する。
ExtraBoldは、山本氏のコンセプトスケッチを基に、3Dプリンタでの出力を前提とした3Dデータを設計。造形サイズの制約を踏まえた部材の分割や接合位置決め、現地搬入や設置を考慮した施工性などを検討するとともに、造形時に発生しやすい反りや変形を抑える形状に調整している。
原氏によると「家庭用3Dプリンタはかなり複雑な形状まで造形できるようになってきた一方、大型機は射出成形用のスクリューを応用したヘッドを搭載しているため造形条件に制約が多い。一般的な家庭用機のノズル径が0.4ミリ程度なのに対し、大型機は2〜8ミリ程度の太いノズルを使用する。大量の樹脂を吐出するため、途中で止めることが難しく、『一筆書き』に近い形状設計が必要になる。形状の制約がある中で、いかに形を決め、作り上げていくかというプロセスが難しかった」と振り返る。
今回、新しい質感表現に挑戦するため、材料には木質由来の風合いと樹脂の柔軟な加工性が両立するウッドプラスチック材料のTABWDを採用した。山本氏が日本滞在時にサンプルを確認して、「自然木のような風合いが作品イメージに合う」と評価し、採用が決まったという。
製作では、大型3Dプリンタ「EXF-12」と協働ロボット型3Dプリンタ「REX-BUTLER」を用途に応じて使い分けた。EXF-12は造形エリアが1700×1300×1000ミリと広く、主に長尺部材を担当。一方、REX-BUTLERはロボットアームによる多軸造形が可能で、パーツや複雑な比較的小型のパーツを製作した。
装置は最大で1時間当たり約15キロの樹脂を吐出可能で、今回の展示では、全体で約200キロの材料を使用。原氏によると、造形作業は合計2〜3日程度で完了したという。
完成した部材は分割した状態で現場へ搬入し、会場で組み立てた。施工では木工に強い内装業者とも協業し、背面には補強板を設置することで、施工性と強度を確保した。
3Dプリンタの建築分野への展開可能性
ExtraBoldではこれまで、複数のクリエイターと協業し、一点物の造形を手掛けてきた経験がある。クリエイターのイメージを立体へ落とし込むナレッジも強みだという。工業用の部材では、3Dプリンタ単独ではなく、切削加工などの工作機械を組み合わせて精度を高める技術も必要とされ、そこで培った経験も生かされている。
原氏はこうした技術力を背景に、3Dプリンタの建築分野への応用可能性についても言及した。「当社製プリンタのユーザーには、TABWDを使って家具を製作/販売している事例もある。3Dプリンタで家具や内装を作れる時代になってきた。当社の装置は、加熱によって柔らかくなる熱可塑性樹脂であればほぼ対応可能で、材料の特性に合わせてパラメーターを調整するノウハウもある」と自信を見せた。
原氏によれば「日本では3Dプリンタの使用が限定的だが、欧州では3Dプリンタによるオーダーメイドの内装材やパーティション製作も普及してきている」という。
3Dプリンタを使えば完全オリジナルの形状の製品を短期間で製作でき、再度パーツが必要になった場合でもデータが残っていれば再製作は容易だ。在庫を持つ必要がなく、複雑な形状でも従来の人の手によるオーダーメイド品と比較してコストや工期を抑えられる可能性があり、設計次第では施工負担の軽減にもつながる。
また、間伐材や農業副産物を樹脂材料と組み合わせることで、廃棄物のリサイクルや石油由来のプラスチック使用量の削減にも寄与する。
原氏は、「例えば、子どもが小さい頃に使っていたプラスチック玩具をリサイクルして家具に再生するなど、個人のストーリーと結び付いたものづくりにも展開できる」と話し、3Dプリント技術による新たな価値創出への期待を示した。
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