名神高速の床版取替で、鹿島がUFC床版と外ケーブル補強を初適用:スマートコンストラクション
鹿島建設は、名神高速道路の床版取替工事で、超高強度の「UFC道路橋床版」と「外ケーブル補強工法」を組み合わせた国内初の工法を採用した。軽量な床版と革新的な鋼桁補強により、上部工の重量増加を最小限に抑え、耐震性の向上と工期短縮を両立した。
鹿島建設は2026年4月6日、名神高速道路の矢倉川橋(滋賀県彦根市)における床版取替工事で、超高強度繊維補強コンクリートを使用した「UFC道路橋床版」と、鋼桁を補強する「外ケーブル補強工法」を組み合わせた国内初の施工を実施したと発表した。軽量な新素材と効率的な補強手法の相乗効果で、橋梁の耐震性を大幅に高めつつ、厳しい車線規制を伴う工事の期間短縮を実現した注目のプロジェクトだ。
老朽化橋梁のネックとなる「重量増加」の課題
高度経済成長期に建設された高速道路橋は現在、大規模な更新期を迎えている。経年劣化した既存の鉄筋コンクリート(RC)床版を、現行の厳しい設計基準を満たすプレストレストコンクリート(PC)床版に取り替えるのが一般的だ。しかし、PC床版はRC床版よりも厚みが増して重くなるため、橋を支える鋼桁の補強や橋脚の耐震補強が追加で必要になるケースが多い。
従来の鋼桁補強では、鋼板の厚みを増したり補強部材を追加したりする手法が採られてきた。ただ、これらの方法は橋全体の重量がさらに大きくなるだけでなく、工費の増加を招きやすい。何より、交通を制限する車線規制期間中に補強材の固定などの煩雑な作業が発生し、多くの時間と労力を要することが現場の大きな課題となっていた。
こうした課題を解決するため、鹿島建設が阪神高速道路と共同開発したのが「UFC道路橋床版」だ。これは、圧縮強度が150N/mm2以上と極めて高い超高強度繊維補強コンクリート「サクセム」を用いたプレキャスト床版に、橋軸とその直角の2方向から高いプレストレス(あらかじめ与える圧縮力)を導入したものだ。
従来のPC床版に比べて圧倒的に薄肉で軽量ながら、高い疲労耐久性を誇る。重量が軽いため、橋脚や基礎にかかる負荷を減らし、耐震性の向上に直結する。鹿島建設は2018年の初適用以来、すでに5橋の工事で実績を重ねてきた。
今回の矢倉川橋の工事(橋長29.1メートル、床版44枚)では、この軽量なUFC床版の長所をさらに引き出すため、国内で初めて「外ケーブル補強工法」を鋼桁の補強に採用した。主にコンクリート橋の補強で使われる技術で、今回は鋼桁の下部スペースにケーブルを配置し、定着部などを介してケーブルをピンと引っ張り、橋桁の上からかかる荷重に対する耐力を一気に向上させた。
工期短縮と耐震性の大幅アップを実現
UFC道路橋床版と外ケーブル補強工法を組み合わせた効果は絶大だ。まず、鋼桁のフランジ増し厚や補強材の追加が不要になったことで、上部工全体の重量増加を最小限に抑えることに成功した。床版自体の軽量化と相まって、取替前と比べても道路橋の耐震性が飛躍的に向上している。
また、施工管理の面でも大きなメリットを生んだ。外ケーブルを緊張する作業は、本格的な床版取替工事が始まる前に済ませることができる。これにより、時間との勝負になる車線規制期間中(床版取替期間中)に補強作業を行う必要がなくなり、従来の鋼桁補強で要した時間と労力を大幅に削減した。
インフラの老朽化対策が急務となる中、工事による交通渋滞の最小化と安全性の確保は社会的な要請だ。鹿島建設は今後、今回の矢倉川橋での工事で得られた知見を生かし、UFC道路橋床版を使った大規模リニューアル工事への導入をさらに拡大していく構えだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
通行止めせず高速道路を大規模修繕、鹿島とNEXCO中日本の新工法
鹿島建設は、NEXCO中日本と共同開発した超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC)を用いた道路橋床版のリニューアル工法を、高速道路を供用しながら行う大規模改良工事に国内で初めて導入した。通行止めを行わず、約8時間で128メートルの施工を完了した。
スマートメンテナンス:インフラ分野に最適化した光ファイバーセンシング計測器「SensRay」、鹿島建設と島根大学が共同開発
鹿島建設と島根大学は、インフラ構造物に生じるわずかな変状を高精度に捉えられる光ファイバーセンシング技術の普及を目的に、計測器「SensRay」を開発した。
xR:石神井川工事に採用、竹中土木も導入した「作る前に直す」リコーの設計検討VRサービス
建設業界でもVRやARなどのxRサービスが安全教育や内見、設計レビューなどで活用が進む中、リコージャパンはコスト増や工期延長に影響を与える「設計検討」にフォーカスしたVRサービスを提案する。BIM/CIMや点群をもとに生成したVR空間では、特許取得済みの独自インタフェースや音声入力、ツアー移動、VR酔い防止などの豊富な機能を備える。既に東急建設や竹中土木などが先行導入し、発注者含む関係者の情報共有や現場ライブ中継のVR監視などに活用した。
防災:空気清浄機と給湯リモコンが避難指示伝達 シャープやリンナイが神栖市の津波訓練で実証
茨城県神栖市、シャープ、リンナイなど5者は、神栖市全域で実施する津波避難訓練で、 IoT/発話機能を備えた空気清浄機と給湯リモコンによる避難指示の伝達効果を検証する。
山岳トンネル工事:山岳トンネルの切羽性状を定量評価、鹿島建設が「切羽評価システム」を開発
鹿島は、スマートフォン画像やLiDAR、加速度センサ、赤外線カメラなどのデータを独自ソフトで分析し、山岳トンネル工事で切羽の性状を定量的に分析/評価する「切羽評価システム」を開発した
プロジェクト:横浜市役所跡地に33階建て「BASEGATE横浜関内タワー」完成 オフィスエリアを先行公開
2026年3月19日のグランドオープンを前に、JR「関内」駅前の大規模複合街区「BASEGATE横浜関内タワー」のオフィスエリアが報道陣に公開された。タワー棟11〜33階に、関内エリア最大級となる1フロア2000平方メートル超のオフィスを整備する。
i-Construction 2.0:新名神高速工事に鹿島の自動化施工システム「A4CSEL」を初適用 盛土作業を自動化
NEXCO西日本と鹿島建設は、鹿島建設の自動化施工システム「A4CSEL」をE1A新名神高速道路の建設現場に導入した。- 3Dデータ活用や施工自動化など「ダム現場の働き方改革」106事例を公開 国交省


