なぜ「維持管理BIM」が定着しないのか BIM×クラウドと“業務フロー”視点の導入術【BIM×FM第11回】:BIM×FMで本格化する建設生産プロセス変革(11)(2/2 ページ)
本連載では、FMとデジタル情報に軸足を置き、建物/施設の運営や維持管理分野でのデジタル情報の活用について、JFMAの「BIM・FM研究部会」に所属する部会員が交代で執筆していく。本稿では、総合不動産管理クラウド「@property」を提供するプロパティデータバンクが、東京オペラシティビルと取り組んだ事例などを交え、維持管理にBIMを活用する手法や得られた成果などを解説します。
・日常点検や保全業務の効率化
当日に実施する点検場所や設備、その作業で必要となる設備の位置や形状を把握できます。その際に同一フロアの壁、天井、関連設備を表示することで、設備機器の設置状況も確認できます。
・中長期修繕計画の立案支援
中長期修繕計画の対象となる設備や修繕する区画や場所などを登録することで、BIMで年度ごとに計画された設備や場所が分かります。
BIMを業務で使い続けるための導入ステップ
国交省のBIMモデル事業で得られた知見を単なる検証にとどめず、自治体や民間企業と「維持管理BIMを活用した実運用プロセスの構築」を目的としたプロジェクトを多数実施しています。プロジェクトではBIMの構築ではなく、「BIMを業務で使い続ける仕組みをどう構築するか」を最大のテーマとしています。そのために各プロジェクトでは、以下の3つのステップを一貫して支援しています。
1.維持管理BIM向けEIR(情報交換要求事項)の策定
最初に行うのが、維持管理業務の現状把握です。点検、修繕、契約管理、設備台帳、収支管理など、クライアントが行っている業務内容を整理し、「どの業務にBIMを活用するのか」という適用範囲を明確化します。その上で、維持管理BIMの目的に合致した「EIR(情報交換要求事項/発注者情報要件)」を作成します。
- どの業務で、BIM活用を推進するのか
- BIM側とクラウド側のそれぞれで、どのような情報を持たせるのか
- クラウドのどの機能とBIMを連携するのか
こうした内容をEIRとして文書化することで、業務で使えるBIMの設計を進めます。
2.維持管理BIMと連携したクラウド環境の構築
策定したEIRに基づき、クラウド環境を構築します。単にBIM連携を用意するだけでなく、
- クラウド環境に設定するマスター定義
- 必須項目とその入力規則
- BIM活用を前提とした業務フローの策定
など、「ルールづくり」をサポートします。業務の検証では、実際の設備や点検履歴を想定したサンプルデータを登録し、「BIMを使うと、日々の業務がどう変わるのか」を操作を通して体感してもらいます。その結果、クライアントは“実務で活用する維持管理BIM”のイメージをつかむことができます。
3.課題抽出と利活用拡大の伴走支援
環境構築後は、担当者に業務を通して利用していただきます。また、定期的に打ち合わせを行い、以下の点を確認します。
- 想定した通りにBIMが使われているか
- 業務負荷の軽減につながっているか
- 業務や連携したクラウド環境において改善すべきポイントがあるか
課題をひとつずつ整理し、BIMの活用方法やクラウドの設定改善を提案します。さらに、IoTデータ連携や修繕計画への展開など、最新の維持管理BIMの利活用方法も併せて提案し、維持管理業務の改善活動を実現します。
維持管理業務に沿ったBIMがもたらす本質的価値
設計・施工時につくられたBIMには、設備のメーカーや仕様/寸法、設置位置など、建物を長期的に運用していく上で欠かせない情報が集約されていますが、維持管理で利用されるBIMは要件が異なります。その要件を明らかにして、維持管理業務に沿ったBIMを構築することが重要です。その理由を3つ挙げます。
1.人に依存しない施設管理を実現できること
担当者の経験や記憶に頼っていた管理業務を、BIMとクラウド上のデータで標準化することで、誰が担当しても同じ品質で施設を管理できる体制を構築できます。
2.建物の価値を“維持”から“高める”管理へ変えられること
点検履歴、修繕履歴、更新計画をBIMと結び付けることで、場当たり的な対応ではなく、将来を見据えた戦略的な修繕や投資判断が可能になります。
3.日本が直面する社会課題への解決策になること
老朽化する公共施設、限られた予算、人材不足という課題に対し、維持管理BIMは、少ない人数でも質の高い施設運営を続けるための基盤となります。
おわりに
維持管理BIMの取り組みは、単なるIT導入ではなく、施設管理の在り方そのものを変える「業務改革」の第一歩だと考えています。今後もBIMを建物を作るためのツールから、「建物を守り、価値を高め、未来へつなぐための基盤」へと進化させてまいります。
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