ジョンソンコントロールズ、25年度は国内売上/利益が過去最高に 26年度もデータセンター軸に事業展開:2026年度事業戦略発表会(2/2 ページ)
ジョンソンコントロールズは2025年度、データセンターなどの高需要分野が成長をけん引し、売上高、利益ともに過去最高を更新した。2026年度の事業戦略として、「脱炭素化」「AIエコノミーへの貢献」「ミッションクリティカルな環境の安定稼働/効率化支援」の3本柱を掲げ、重点分野への投資と組織改革を通じて持続的成長を目指す。2025年度の振り返りと2026年度の事業戦略について、代表取締役社長 松下太郎氏が語った。
2026年度の事業戦略に掲げた3本柱
ジョンソンコントロールズは2026年度の事業戦略に、「脱炭素化」「AIエコノミーへの貢献」「ミッションクリティカルな環境の安定稼働/効率化支援」の3本柱を掲げた。
脱炭素化分野について、松下氏は「大企業に対するサステナビリティ関連情報の開示義務付けなど規制強化が進んでいる。一方でエネルギー消費を最適化できていない施設は多い」と指摘する。自動制御技術やスマートビル向けデジタルプラットフォーム「OpenBlue(オープンブルー)」、HVAC(空調冷熱機器)製品などの提供を介して、建物の省エネルギー化やCO2排出量の削減を支援する。
2つ目の柱であるAIエコノミーへの貢献では、データセンターのエネルギー最適化や安定稼働をサポートする。松下氏は「データセンターはエネルギー消費量が特に大きい施設の1つで、一般的なオフィスビルと比較して床面積あたり10〜50倍の電力を消費する。将来は日本全体の電力需要の約6割を占めるようになるという予測もある。データセンターの冷却システムのエネルギー消費量は施設全体の3割超を占め、水使用量は1日に数百万ガロンに達することもある」と説明。
ジョンソンコントロールズは、データセンターに対して包括的に管理/制御できる冷却システムを提供し、施設全体の効率化を図っている。コンサルティングから設計支援、エンジニアリング、建設、試運転、サービス/メンテナンスまでをワンストップで担う「テクノロジーコントラクティング」により顧客をサポートする。2024年12月に茨城県坂東市に開所したHVACサービスセンターは、機器の起動試験や補修作業、予備品などの保管などを担う拠点として、これらの取り組みを支えている。
さらに2026年には、ハイパースケールおよびAI集約型データセンター向けに開発した「YORK YVAM空冷式磁気軸受チラー」の国内受注を予定している。メンテナンスフリーで、従来と同等の冷却能力を維持しながら年間消費電力を約4割削減でき、現地での水使用をゼロにできる点が特徴だ。松下氏は「広い設置スペースの確保が難しい都内などでは、空冷チラーの需要が見込まれる。顧客の使用環境やニーズに応じて、水冷/空冷を使い分けた提案を行っていきたい」とした。
3つ目の柱として掲げたミッションクリティカルな環境の安定稼働/効率化支援では、製薬業界や病院、空港、鉄道などに対し、冗長性の高い自動制御システムの構築、ITを活用した省力化を通じて安定稼働を支援する。「クリーンルームや冷蔵保管など、一般の施設よりも厳しい条件で高精度な制御が求められる施設を想定している。投資が活発な半導体工場なども対象になる。当社の既存技術やサービスが貢献できる分野だ」と松下氏は述べた。
持続的な成長に向け施工体制強化や人材育成にも取り組む
対内的には、業務プロセスの効率化や組織キャパシティの向上にも取り組む。
協力会社に対しては、実機を使用した施工研修の提供などを通じ、施工体制の強化と関係性の深化を図る。また、現場の安全対策として危険予知にAIを活用している。現場で撮影した写真を生成AIに読み込ませ、リスクの抽出と対策の提案に役立てている。
部門間のコミュニケーションと情報共有の強化にも取り組む。松下氏は「当社は日本の組織に加え、営業やプロジェクト、サービスなど機能ごとにグローバル組織を持つマトリックス型の体制だ。専門的な知見を幅広く吸収できる一方で、部門ごとのKPIが優先されることで、本来の顧客に向いた仕事よりも、社内向けの調整に時間を要してしまうリスクがある。この課題を踏まえ、部門を超えたコミュニケーションを重視している。問題が生じた際には部門横断のチームを立ち上げて迅速に対応する体制を整えている」と語った。
また、既存顧客との関係強化や新規顧客の獲得に向けては、人材不足への対応が重要なテーマとなる。松下氏は「建設業界共通の課題である人材不足は当社にとっても例外でない。そこで、支店ごとに人員を管理する体制を基本としながらも、支店の枠を超えて人材を柔軟に活用する仕組みを強化している」と語る。本社部門が中心となって情報を集約し、プロジェクトごとに最適な人材配置を判断する取り組みを通じて、「顧客から要望があったプロジェクトに対して、できる限り応えていきたい」と述べた。
従業員のエンゲージメント向上にも注力
組織の持続的成長に向けて、従業員のモチベーションアップやエンゲージメント向上にも注力する。「当社はもともとトップダウン色の強い組織だが、できる限りボトムアップで現場の声を吸い上げ、実際の現場情報に基づいて事業戦略などに反映していく」と松下氏。
新年度の戦略策定では、全国のマネジャー約250人が対面で集まり、ディスカッションを通じてアクションプランを策定した。顕著な成果を上げた従業員を表彰するアワードセレモニーを実施し、パートナー帯同での参加を認めるなど、従業員の功績をたたえる機会も設けた。
人材の定着や多様性の観点では、女性技術者を中心とした交流会「現場女子会」を開催した。経営層と従業員が直接対話するタウンホールミーティング、従業員の家族に感謝を伝えるファミリーデーの全国開催などを通じ、組織の活性化に取り組んでいる。
この他、四半期ごとのエンゲージメント調査も実施し、エンゲージメント調査の結果はスコアだけでなく、コメントも含めて各マネジャーに共有し、改善に向けた議論を重ねている。
建設案件が長期化 短工期案件でギャップ補う
近年は建設プロジェクトが長期化し、再開発などは受注から売上計上までに時間を要する傾向が強まっている。松下氏は「2025年度はデータセンターなどの比較的短工期の案件を取り込むことでギャップを補う形になった。2026年度も引き続きデータセンターを注力分野とする一方、半導体工場などの産業施設分野にも重点を置く」とした。一方で、「商業施設やオフィスは当社にとってコア領域であり、製品やサービスとの親和性が高いため、引き続き積極的に提案していく」と強調した。
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