建設現場の命を守る「最後の砦」、フルハーネス普及の壁は勘違い? 3Mの事故ゼロを目指す新戦略:安全衛生(1/3 ページ)
2019年にフルハーネス義務化の政省令改正から早6年が経過したが、約半数がいまだに胴ベルトを使用しているという。45年もの長きにわたり、フルハーネスのノウハウを持つスリーエム ジャパンは、普及を妨げる要因は作業者の“勘違い”にあると指摘する。その誤解を解くべく、学習機会の提供やより安全性を高める製品の提供などに努めている。
スリーエム ジャパンは2025年11月11日、東京都品川区の本社で高所作業でフルハーネスを活用した安全対策についての説明会を開催した。高所作業でのフルハーネスのさらなる普及と新たなソリューションの展開、2026年に向けた事業方針などについて4人の登壇者が紹介。会の後半ではフルハーネスを着用し、宙吊りで「救助待ち」の状態を体験する時間も設けた。
働く人の命を守る「最後の砦」
冒頭、スリーエム ジャパン 安全衛生製品事業部 マーケティングリーダー 湯元沙織氏が安全への取り組みについて説明した。
スリーエム全体としては、安全衛生関連製品を扱う「セーフティー&インダストリアル」、建築内装材や自動車用両面テープなどを扱う「トランスポーテーション&エレクトロニクス」、3Mが商標を有する付箋の「ポスト・イット」やサビ落としに使うたわし「スコッチ・ブライト」などを扱う「コンシューマー」の3グループでビジネスを展開する。このうち、フルハーネスは「セーフティー&インダストリアル」部門の扱う。3グループを合計した2024年の純売上高は約3兆6700億円で、「セーフティー&インダストリアル」の部門は1兆6644億円を生み出す。
その一翼を担うスリーエム ジャパンの安全衛生製品事業部は、「全ての働く人を安全に、家族の元へ」を事業理念に定める。現場作業では、危険を取り除いた上で行うのが基本となる。もし予知できる危険がある場合は、作業の代替法を考えたり危険な箇所を隔離して管理したりするなどの処置が求められる。また、危険の水準を下げるように環境や管理方法を整えることも重要だ。
しかし、それでも事故が起こる。湯元氏は、フルハーネスなどの個人用保護具は「働く人の命を守る、健康を守る最後の砦。そのため、安全性能は不可欠だ」と述べた。
米スリーエムは、1940年に世界で初めて巻取り式の安全ブロックの特許を取得し、以降85年以上にわたって墜落防止用製品の分野をけん引。フルハーネスとランヤード(命綱)では、45年間の実績を有する。湯元氏は「現在までに75カ国以上に製品を提供し、世界中に100万個以上のフルハーネスを出荷している」とした。
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