車輪で移動、斜面に設置できる新型インスタントハウス開発 LIFULLと東急:製品動向
LIFULL ArchiTechと東急は、都市部の未活用地活用や災害時の分散型拠点として使用できる新型インスタントハウス「ローラー」を開発した。
LIFULL ArchiTechと東急は2025年11月20日、インスタントハウスの新型モデル「ローラー」を共同開発した。車輪付きで高さ調整を可能とし、分解できる構造の土台を採用したことで、従来モデルよりも設置や移設の柔軟性が向上した。新モデルは東急が展開する機能特化型個室シェアサービス「ルービー」の新店舗として採用された。
インスタントハウスは、空気でテントシートを膨らませ、内側から断熱材を吹き付けて形成する構造物。LIFULLと名古屋工業大学大学院の共同研究で開発した。断熱性や遮音性を確保しながら短時間で設置できる特性から、グランピングや被災地支援の現場で利用されてきた。一方、都市部など設置条件の制約や移設に伴う施工難度などにより適用範囲は限定的だった。
新モデルのローラーは、複数の床パネルを組み合わせたモジュールベース構造の下面に、移動に使用するキャスターと、床の水平を確保する高さ調整機構を備えている。斜面や不整地へも柔軟な設置が可能で、重機を使わず数人で施工でき、設置から撤去、再設置までを最短3日で行える。平常時には都市部の遊休地活用に、災害時には迅速に移動/設置できる分散型防災拠点として機能する。
東急は2024年1月、インスタントハウス・パージ型を高架下店舗の「ルービー不動前」で採用した実績がある。新モデルは神奈川県川崎市に2025年11月25日に開業予定の「ルービーあざみ野ネクサス」の店舗として初適用する。アップライトピアノやソファ、机などを備えた防音設備付き音楽スタジオで、広さは約15平方メートル。
LIFULL ArchiTechは、新型モデルの提供を通じて、都市部未活用地の活用や災害時の分散型防災拠点の実現など平常時と災害時をつなぐ「フェーズフリー」な空間づくりを目指す。
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