2027年アジア杯開催のサウジアラビア「アラムコ・スタジアム」で膜工事受注、太陽工業:プロジェクト
太陽工業は、サウジアラビア東部のアルコバール市で建設が進む「アラムコ・スタジアム」の膜構造工事を受注した。収容人数約4万7000人のスタジアムで、2027年AFCアジア杯や2034年FIFAワールドカップの会場となる。工事では花びら状のアルミ屋根の間に膜パネルを配置する。
太陽工業は2025年11月12日、サウジアラビア東部のアル・コバール市で建設が進む「Aramco Stadium(アラムコ・スタジアム)」の膜構造工事をドバイ現地法人Taiyo Middle Eastを通じて受注したと発表した。2026年1月に着工し、同年6〜7月の施設開業を見込む。
軽量で経済的な設計を可能にする「PTFE膜」採用
サウジアラビアの国営石油企業Saudi Aramco(サウジアラムコ)が施主となっているアラムコスタジアムは、海岸の渦潮をモチーフとした有機的な外観を特徴とする多目的施設。太陽工業は、スタジアムを包む花びら状のアルミ屋根間の膜パネルやアルミ屋根の内装膜、上部屋根の膜部分の設計や製造、施工を請け負う。
膜面積は4万5000平方メートルで、膜材には「PTFE膜」を採用。ガラス繊維織物にフッ素樹脂をコーティングした複合材で、軽量のため、構造荷重が大幅に軽減し、支持する鉄骨構造もより経済的な設計が可能になる。素材自体は自然光を拡散させながら採り入れるので、日中の照明使用も低減する。
また、熱の蓄積を抑え、観客の快適性を高めるとともにエネルギー効率向上にも寄与。引張構造や曲面形状を容易に形成できる特性を持ち、構造性能を損なわず複雑な建築形態が実現する。
膜の製造は京都の太陽工業瑞穂工場と、中国上海の上海太陽工業膜結構で行い、工事着手は2026年1月から開始し、同年6〜7月の完成を目指す。
スタジアム完成後の収容人数は約4万7000人となる見通しで、2027年開催の2027年AFCアジア杯や2034年FIFAワールドカップの会場となる他、地元プロクラブ「Al Qadsiah(アル・カーディシーヤ)FC」の本拠地となる。
アラムコスタジアムのプロジェクト参画企業は、設計監修がPOPULOUS、実施設計がDar Al Handasah - Shair & Partners、構造設計がMaffeis Engineering。元請けはSix Construct Saudi & Al Bawani(SBJV)、ファサード下請けはTechnical Glass & Aluminium(TGAC)。
太陽工業はこれまで、カタールのハリーファ国際スタジアムや米メルセデスベンツスタジアムなど、世界各地で膜構造スタジアムを手がけてきた。今回の受注を足掛かりに、中東地域での事業基盤強化を図る考えだ。
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