国交省が示す“人口減時代を生き抜く”インフラDX 3割省人化と生産性1.5倍へ:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2025(3/3 ページ)
建設業界は今、深刻な人口減少、頻発する自然災害、そして高度経済成長期に整備されたインフラの老朽化という3つの難題に直面している。これまでの建設業の延長線上では対応できない難局に対し、国交省はデジタル技術を駆使して現場の生産性と安全性を高める「i-Construction 2.0」を打ち出した。その全体像を大臣官房参事官(イノベーション)の講演から読み解く。
データ活用で80人分の労働削減、大幅な省人化が可能に
データ活用による効率化も成果をみせている。現場で稼働するダンプトラックやバックホーの位置情報をリアルタイムで解析し、ボトルネックを解消した現場では、延べ80人分の労働力を削減。スイッチバックを繰り返していた運搬経路も見直し、積み込み機械を増やした結果、1日の施工量が大幅に増加して50人規模の人員削減にもつながった。
こうした実証事例は、データ解析と現場改善の組み合わせが省人化に直結することを示している。信太氏は「データ活用による現場の効率化は、単なる時間短縮にとどまらず、労働力不足を補う手段になる」とした。
データ連携のオートメーション化では、測量から設計、施工、維持管理までを3次元データで一元管理するBIM/CIM活用が着実に進行している。ある橋梁(きょうりょう)工事では、3次元モデルを積算に直接活用し、数量算出を自動化している。人手に依存していた積算業務が大幅に効率化し、設計から施工までの連携も強化した。さらに、設計データをそのまま工場に引き継ぐ仕組みも整備されつつあり、工程での手戻りを減らす効果も期待されている。
また、施工管理では、AR技術を活用した出来形確認やAIによるコンクリートスランプ試験の画像解析も活用している。従来7人がかりで行っていた試験を1人で対応できるようになるなど、省人化と安全性の両立に寄与している。
信太氏は「3次元の設計データがそのまま引き継がれれば、その後の処理がだいぶ楽になる」と語る。そのためには、3次元モデルを契約図書化し、共有できる仕組みを整備することが重要になる。データをプロジェクト全体で循環させることで、業務の透明性と効率性が高まり、将来は自治体発注工事や地域建設業にも普及していくことが期待される。
施工管理のオートメーション化としては、コロナ禍で普及したリモート監督の手法が現在も現場管理の効率化に活用されている例を提示。信太氏は「ネットワーク環境の整備が不可欠だ。遠隔からの監督や検査で、移動時間の削減や人員の最適配置が可能になった」と紹介した。
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