三建設備工業とAutodeskが「戦略的提携に関する覚書」締結 ACCを2026年3月までに全社展開:BIM
三建設備工業とAutodeskが「戦略的提携に関する覚書」を締結した。は、三建設備工業は、エンジニアリング分野のデータを一元管理する共通基盤に建設クラウドプラットフォーム「Autodesk Construction Cloud」を採用し、2026年3月までに全社展開する。
商業施設や文化施設などの空間づくりを手掛ける三建設備工業と米Autodeskは2025年5月26日、「Autodesk Construction Cloud(ACC)」の全社活用を目的とした「戦略的提携に関する覚書(MOU)」を締結したと公表した。
データの管理基盤となるAutodesk Construction Cloudを全社展開
三建設備工業は1946年創業で「空気と水の環境創造企業」をモットーに、快適性と省エネ性を両立させた建物づくりを通じ、持続可能な社会の実現に貢献する総合エンジニアリング企業。現在の建設業界では、炭素社会や人材不足への対応、ESG評価の観点から建物のライフサイクル全体での環境負荷低減が求められており、メンテナンスを含むLCC(ライフサイクルコスト)の最適化が一層重視されている。
そのため、三建設備工業では業務プロセスの根本的な変革に取り組み、特にACCを活用した「共通データ環境(CDE)」の基盤整備に注力。政府による共通データ基盤の推進も追い風となり、業務の効率化や省力化に向けたデータの一元化を加速させている。

三建設備工業 代表取締役社長 松井 栄一氏(写真左)、オートデスク 代表取締役社長/Autodesk Japan Sales Vice President 中西智行氏(写真右) 出典:オートデスクプレスリリース
今回のMOU締結を機に、社内で点在する各種データや情報をACC基盤のCDEに集約し、システムの共通化と管理体制の統一を進める。また、Autodeskの支援の下、CDEの高度化と運用体制の構築を進め、生産性向上や高いESG評価の獲得を目指し、企業価値のさらなる向上を見込む。深刻化する人手不足への対応策としても、協力会社を含むバリューチェーン全体のデジタル基盤整備に着手し、効率的かつレジリエントな建設体制の構築を目指す。
MOUでは、プロジェクト管理ソフトウェアの「Autodesk Build」やACCを活用し、設計と施工の連携を強化。設計段階での前倒し作業“フロントローディング”や複数のプロセスを同時並行で行う“コンカレントエンジニアリング”を実現し、業務の効率化、プロジェクト対応の迅速化、品質向上を目標に据える。
さらに全社展開ではACCを社内の共通基盤とし、バリューチェーン全体にわたる業務プロセスの効率化を推進。2026年3月までの全社展開に向けたロードマップをもとに、アクションプランを策定する。BIMデータを含む各種データをACCに集約し、部門横断的なデータ活用で管理や労務のコスト削減を見込む。
また、ACCを活用したCDE構築で建設情報を一元的に可視化し、部門間やプロジェクト間での知見共有を促して、プロセスの標準化と属人化の防止、ナレッジ蓄積で、業務の質とスピードの向上を図る。
三建設備工業 代表取締役社長 松井栄一氏は、「今回のMOU締結はACCの全社活用を通じ、当社のデジタルトランスフォーメーション推進と課題解決への大きな一歩となる。空気と水の環境創造企業として、建設業界が直面する労働力不足や高度化する社会ニーズに応える生産性の向上は急務となっている。新たなスタートラインとしてデータの有効活用を競争力につなげることで、建設業界全体の発展にも貢献できる」と話す。
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