スマートビル社会実装までにサービスロボ、データモデル、専門人材「MSI」が果たす役割:SMART BUILDING CONFERENCE 2025(3/3 ページ)
情報処理推進機構とデジタルアーキテクチャ・デザインセンターは2025年3月27日、東京・千代田区でスマートビルの一般社会での普及を目指す「スマートビルディング共創機構」の設立を発表する「SMART BUILDING CONFERENCE 2025」を開催。本稿では、その中からDADC内の「サビロボ(サービスロボット)」「データモデル」「MSI(マスターシステムインテグレーター)」の各アプローチでスマートビル社会実装に向けた活動成果と今後の課題などを発表した。
【MSI分科会】現場から考えるMSIの役割
分科会報告の最後は、大成建設の大野元嗣氏が講演。MSI(マスターシステムインテグレーター)勉強会の活動を紹介した。勉強会はスマートビルの構想策定から運用までを横断的に支えるMSIの役割を整理し、実務に落とし込むための議論の場となる。
大野氏は「サービスロボットやデータモデル、ユースケースなどをインプットして、どのように実装するかを考えていかなければならない」と語り、MSI勉強会がその役割を担うと説明した。
大野氏は、「MSIという新しい職能がスマートビルの実現に向けた課題解決やサービスの企画や運用などに必須の存在だ」と説く。スマートビル構築全体を貫く人材像、各フェーズでの役割と課題、協調領域と競争領域の整理などを整理した。
MSI勉強会は、スマートビルの構想から運用までを担う、MSIの役割やスキルセットを明確にすることを目的とし、設計事務所やゼネコン、デベロッパーといった多様な立場の参加者が議論を重ねてきた。
MSIが扱う範囲は広く、構想策定、設計・構築、運用支援といった複数フェーズにまたがる。1人の専門家が全てを担うのではなく、フェーズごとに役割を明確にし、複数のプレイヤーが連携して支える体制が必要との認識を共有した。
特に重視するのは運用視点の導入だ。構想段階で運用まで見据えたサービス設計がされなければ、導入後の運用段階で活用できないスマートビルになりかねない。そのため、設計段階から運用担当者と協働し、導入後の体制やスキル継承までを考慮する必要がある。
さらに勉強会では、「協調領域」と「競争領域」の線引きについても議題に挙がった。全てを標準化するのではなく、共通化すべき部分と、企業独自の強みを発揮すべき部分を見極めることが、業界全体の成長にとって重要という考え方だ。
大野氏は、「議論を通じてMSIという職能の社会的認知を高めるとともに、より現場に即した役割定義と育成体制を構築していきたい」と語った。今後はガイドライン整備や研修体系の構築などで、実践的なMSI育成を目指す。
3つの分科会報告からは、スマートビル実装には技術、データ、人材の多層的な取り組みが不可欠なことが示された。共創を通じて蓄積された知見を基に、今後はさらに現場との連携を強めながら、実装フェーズへの歩みが加速していくことが期待される。
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