大林組が金属系の建設3Dプリンティング技術を開発 技研で大型モックアップ披露:デジタルファブリケーション(3/3 ページ)
大林組は、金属を素材とする3Dプリンティング技術を開発し、コンピュテーショナルデザインで自動生成した3Dモデルをベースに座面付きの大型オブジェを制作した。これまでセメント系が多かった建設用3Dプリンタで、新たに金属系素材が扱えるようになり、建設業界でデジタルファブリケーションの用途が広がることになる。
3Dプリントしたユニットの組み立ては、MRで3Dモデルを現場に投影
部材30ピースの組み立ては、MR(Mixed Reality)技術で現実空間に設計3Dモデルを重畳し、部材同士の納まりを確認しながら、金属部分は溶接、金属と樹脂はボルトで接合した。
設置後は金属部材を塗装し、約2年間の暴露試験で仕上げの劣化や耐久性を確認。2025年5月の見学会時点では、屋根、座面は未設置、区画用ポールは一基のみだったが、3Dモデルはできているので2025年8月上旬には全体が完成する。
中村氏は「全体の制作期間は金属部分で4カ月、樹脂は1カ月。ポール単体であれば80時間でプリントできるが、熱を冷ますのに時間が掛かる。そのため、同時並行でプリントすれば80時間で4本が完成する」と説明する。
設計本部 設計ソリューション部 課長 木村達治氏は3DCPの位置付けについて、オーストリアの建築家クリストファー・アレグザンダー(Christopher Alexander)氏の著作を引用し、建設技術を人間的で有機的な職人技術などの「A」と、機械的で効率的なユニット建築などの「B」に分類。「3DCPはAとBの双方を併せ持つ、人間的かつ効率的な生産システムに成り得る」と期待感を示した。
今後のロードマップでは、2035年までに自動設計をはじめ、PPVC工法のユニット製造、鋼繊維入り3DCP用材料、内外装や設備の同時施工などに取り組む。その先は「リサイクル材料によるサーキュラー建築、月の表面に広く分布する細かい砂粒のレゴリスを活用した月面建設なども計画している」と展望を明かした。
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