BELS、CASBEE、DBJ GB…環境性能認証は不動産の“必須要件”になるか(後編):「省エネ計算の専門家」が解説する建築物省エネ動向(3)(1/2 ページ)
本連載では、環境・省エネルギー計算センター 代表取締役の尾熨斗啓介氏が、省エネ基準適合義務化による影響と対応策、建築物の環境認証などをテーマに執筆。第3回は建築物の環境性能認証について、認証を選ぶ際の判断基準や外注先選定のポイントを解説します。
環境配慮を求める社会的要請が高まる中、ESG重視の流れは不動産業界にとって避けられない課題となっています。前回は、既存建物の代表的な環境認証「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」「CASBEE-不動産」「DBJ Green Building」の3つを取り上げ、それぞれの特徴や取得のメリットを説明しました。
上記の環境性能認証については「どの認証を取得すればよいですか?」といった相談をよくいただきます。しかし、各社の方針や物件の特性によって適した認証は異なります。
そこで今回は、取得する環境性能認証を選ぶ際の判断基準と、外注先選定のポイントを解説します。
環境性能認証を選ぶ基準
建築物の環境性能を評価する認証制度は国内外に多数存在しますが、本稿では前回に続き、日本の既存建物で主に取得されているBELS、CASBEE-不動産、DBJ Green Buildingを対象とします。
環境性能認証を選ぶ際のポイントは5つ。
1つ目は建物用途です。BELSは全ての建物用途で取得可能ですが、2025年5月時点でCASBEE-不動産は「オフィス」「物流施設」「商業施設(店舗)」「共同住宅(レジデンス)」「ホテル」の5つ、DBJ Green Buildingは上記に加えて、4月1日より運用開始した「ヘルスケア版」を含めた6つに限られています。そのため、他の用途であれば必然的にBELSを選ぶことになります。
2つ目は取得目的です。BELSは建物の省エネルギー性能のみを評価する制度で、企業のESG配慮を測る国際的なベンチマーク「GRESB」では評価項目「グリーンビル認証:BC2.省エネルギー格付」に該当します。一方、CASBEE-不動産とDBJ Green Buildingは省エネルギー性能を含む総合的な環境性能評価で、GRESBでは評価項目「グリーンビル認証:BC1.2.既存ビル版グリーンビル認証」に当たります。どの認証を取得するかは、企業の方針によって変わってくるでしょう。
3つ目は有効期間です。BELSには有効期限はありません。一方で「CASBEE-不動産は5年」、「DBJ Green Buildingは3年」の期限が定められており、更新の手間やコストを考慮する必要があります。
4つ目は取得にかかる手間やコストです。今回は、外部の代行会社に取得を依頼する場合を想定します。BELSは基本的に図面が用意できれば依頼が可能で、費用は建物の規模や設備、外観の複雑さによって変動します。数万円だけで済むこともあれば、CADデータがない場合の追加費用や認証手数料などを含め数千万円かかることもあります。
CASBEE-不動産とDBJ Green Buildingは、図面に加えて評価項目に応じた資料の提出が必要です。資料がそろっていないと、新しく作成しなければなりません。コスト面では、CASBEE-不動産は用途数や延べ床面積によって段階的に上昇しますが、延床面積1〜2万平方メートルまでは大きく変わりません。DBJ Green Buildingも同様に規模や用途数で段階的に費用が変動します。どちらも認証手数料含めて、目安は数十万円〜数百万円程度です。
5つ目は取得の難易度です。物件の規模や用途、構造、取得に必要な資料の準備状況などで、取得難易度は大きく異なります。具体的な案件について、それぞれの認証の知識を持った専門家に相談するのが適切といえます。
項目 | BELS | CASBEE-不動産 | DBJ Green Building認証 |
---|---|---|---|
建物用途 | 全用途 | オフィス、物流施設、店舗、共同住宅、ホテル | オフィス、物流施設、商業施設、レジデンス、ホテル、ヘルスケア |
目的 | 省エネルギー性能のみを評価 | 総合的な環境性能を認証 | 総合的な環境性能を認証 |
有効期間 | なし | 5年 | 3年 |
手間・時間 | 小〜中(1〜2カ月程度) | 中(2〜3カ月程度) | 中(2.5〜3カ月程度) |
BELS・CASBEE・DBJ Green Buildingの比較 環境・省エネルギー計算センター作成 |
ここまで、環境性能認証を選定する際の判断基準について述べてきました。ただし、あくまで現時点での目安にすぎません。今後、日本では建築物にZEB(ネット ゼロ エネルギービル)/ZEH(ネット ゼロ エネルギーハウス)水準が求められる流れが強まっていくと予想されます。法整備や規制動向なども見据えて、環境性能認証を選択する必要があるでしょう。
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