ロボット工学第一人者の石黒浩氏と長谷工の“生きている家” 現代人が失った自然の気配を五感で感じる暮らし:スマートハウスの概念を変える家(3/4 ページ)
長谷工コーポレーション初のコンセプトハウスとなる感性を取り戻す住まい「ivi house」が、細田工務店や多数のクリエイターの協力を得て、東京都杉並区で完成した。コンセプトは、ロボット工学の第一人者で知られる大阪大学大学院 教授の石黒浩氏が考案。暮らしの中で自然と調和する生命を宿した家を、現代の先端技術と建築の融合で具現化した。
照明、空調、音響、アロマの機器がIoTセンサーと連動して自動制御
ドアを開けると、緩やかなカーブを描いた壁と天井の玄関が出迎える。照明が人の動きに呼応して優しく灯り、包み込まれる安心感と温かく迎え入れる印象を与える。
室内では住人がスイッチを押すことなく、動きを感じ取ったIoT人感センサーが照明、空調、音響、アロマの各デバイスと連動し、あらかじめ入力したプログラムに従って自動制御する。スイッチやリモコンの操作に頼らない生活のため、子供、外国人、感覚過敏な人など多様な住まい手にも受け入れられやすい。
照明はダウンライトを少なくして、吊(つ)り下げ式のペンダントライトや壁のフラットライトを生物的なフォルムとし、人の動きに合わせ、呼吸するように揺らぐ光が行く先を照らす。音響は空間オーディオのDolby Atmos(ドルビーアトモス)同様に16チャンネルだが、固定ではなく、IoTセンサーで音場をコントロール。人のいるフロアで常時アンビエントミュージックが気にならない音量で薄く流れ、音の響きで部屋を広く感じられる。香りは1階が山の麓、2階が山頂のイメージ、朝と夜でもそれぞれ切り替え、異なるアロマ効果で生活リズムを整える。
想定シーンとしては、夜中にトイレへ行くとロウソクに似た柔らかい灯りが足元を照らし、朝には朝日を感じる光とさわやかな香りで目覚めを促す。光、音、香り、空間の五感を呼び覚ます住環境設計で、自然の中にいるような深いリラックス感覚が得られる。
玄関横の和室は畳を用い、い草の匂いや手触りからも感覚を刺激。外界との距離も近く、自然と一体となった静謐(せいひつ)な和の空間を創り出している。
1階の浴室は、石黒氏のこだわりで庭園と隔たりのないシームレスな空間とし、開口部から自然光や風、外の緑を感じ取れる。庭園には石黒氏が考える和の空間に基づき、縁側をあえて設けている。
寝室は静かな環境音と、時間帯に応じて変化する照明と香りで、自然に身体と心が休息に誘(いざな)う。日中は優しい光が差し込み、夜には眠りを促すトーンに変わり、深い休息の部屋となっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.