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ロボット工学第一人者の石黒浩氏と長谷工の“生きている家” 現代人が失った自然の気配を五感で感じる暮らしスマートハウスの概念を変える家(2/4 ページ)

長谷工コーポレーション初のコンセプトハウスとなる感性を取り戻す住まい「ivi house」が、細田工務店や多数のクリエイターの協力を得て、東京都杉並区で完成した。コンセプトは、ロボット工学の第一人者で知られる大阪大学大学院 教授の石黒浩氏が考案。暮らしの中で自然と調和する生命を宿した家を、現代の先端技術と建築の融合で具現化した。

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光×音×香り×空間で、人の感性に働きかけ

 2025年5月8日の内覧会では、設計者やクリエイターらがivi houseのコンセプトや機能を紹介した。

 ivi houseの間取りは、3LDK+WIC(ウオークインクローゼット)+SIC(シューズインクローゼット)で、所在地は京王井の頭線「富士見ヶ丘」駅にほど近い東京都杉並区高井戸西二丁目10番15。もともとは細田工務店が、分譲地4区画を計画していた敷地面積125平方メートルの土地。

 建物規模は木造軸組み工法の2階建て、延べ床面積は100.33平方メートル。基本設計を長谷工コーポレーション、実施設計と施工を細田工務店、IoTセンサーや照明、音響、香りのプログラムは長谷工グループの技術研究所で培われた技術を採り入れている。

計画段階の図面をもとにした「ivi house」の間取り
計画段階の図面をもとにした「ivi house」の間取り 提供:長谷工コーポレーション
長谷工コーポレーション 常務執行役員 堀井規男氏
長谷工コーポレーション 常務執行役員 堀井規男氏 筆者撮影

 長谷工コーポレーション 常務執行役員 堀井規男氏は、「約3年前、大阪・関西万博シグネチャーパビリオンの“いのちの未来館”でプラチナパートナーとしての協賛が決まったのが、テーマ事業プロデューサーを務める石黒氏との縁のはじまり。石黒氏はロボットやアンドロイドだけでなく、住まいにも理想を持っていたため、具現化のために長谷工が力を貸すことになった」と経緯を話す。

 ivi houseの計画にあたり、石黒氏は5年後の未来を見据えた住まいのストーリーを作成。描かれた住まいのビジョンを実現すべく長谷工グループだけに限らず、クリエイティブスタジオのKiQ(キク) Founder & CEO 菊地氏、サウンドアーティスト 佐久間海土氏、内原智史デザイン事務所のライティングデザイナー 川口尚輝氏にも協力を仰いだ。

 石黒氏自身はロボット工学以外でも、堀井氏の言葉通り、10年ほど前から日本のインテリジェントな住居空間の研究を続けていたという。その中で「未来の生活を想像すると、テクノロジーで豊かになるほど文化を大事にするようになるはず。日本固有の住居文化とは、四季の変化を建物や住居で感じたり、障子に映る影で外の様子が分かるなど内と外の境界があいまいだったり、言い換えるなら自然との調和だ」と持論を語る。

大阪大学大学院 基礎工学研究科 教授の石黒浩氏
大阪大学大学院 基礎工学研究科 教授の石黒浩氏 筆者撮影

 ivi projectについては、「テクノロジーを活用し、自然の“生命感”を家の中にも取り込むようにデザインして設計すれば、旧来の自然と調和してきた日本の住居文化が発展する。そうした“生きている家”では、心のようなものを感じながら生き生きと暮らせるのではないか、との発想で今回のプロジェクトを監修した」と説明する。

 石黒氏が語る“生きている家”を具現化したivi houseで、まず目を惹くのが家を包み込む多数のルーバーが特徴的な外観だ。長谷工コーポレーション エンジニアリング事業部が手掛け、Rhinoceros(ライノセラス)上のGrasshopper(グラスホッパー)に位置と角度の条件を与え、コンピュテーショナルデザインでルーバーの配置を検討した。外から丸見えにならないように配慮しつつ、内と外を完全に分離しない「生垣」や「木立」を想起させるデザインとした。

ルーバーが特徴的な「ivi house」の外観。外から丸見えにならないようにコンピュテーショナルデザインで、最適な角度や数を導き出した
ルーバーが特徴的な「ivi house」の外観。外から丸見えにならないようにコンピュテーショナルデザインで、最適な角度や数を導き出した 筆者撮影

 ルーバー自体はアルミに木目調を塗装し、先端は丸い形状。外壁や室内の床、壁、家の各所に曲線的な造形を施し、従来の角を極力排除した有機的な意匠で構成。家の内外で空間そのものが視覚的に変化し、呼吸しているかのような感覚を狙った。

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