建設現場とオフィスをつなぐ“架け橋” 建設業の新しい職域「建設ディレクター」とは?:第9回 JAPAN BUILD TOKYO(2/2 ページ)
建設業界では、2024年4月に時間外労働の上限規制がスタートすると、働き手不足の危機感が一気に強まった。そこで期待されるのが、ITとコミュニケーションで建設現場とオフィスをつなぐ新しい職域「建設ディレクター」だ。建設DXの推進者として業務効率化を担い、業務プロセスや組織自体を変え、新規採用にもつながり、苦境にあえぐ建設業界で救世主のような存在に成り得るという。
現場とバックオフィスの連携を強化する「建設ディレクター」
現在の建設業では技術者の負担が大きく、現場とバックオフィスがうまく連携できていない。建設ディレクターは、ITやコミュニケーションで現場をバックアップし、バックオフィスとの連携を強化する。田辺氏は「現場とバックオフィスの連携強化で自ずとデジタル化の推進や情報共有が進む。建設ディレクターが複数の現場に横断的に関わることで、組織の在り方が変わっていく」と期待を語る。
建設業の仕事を変えるには、デジタル活用がポイントになる。現場で働く技術者とオフィス側が各種情報をリアルタイムで共有できれば、建設DXは前進する。その際、オフィス側にいるのが建設ディレクターだ。
オフィスにいる建設ディレクターは、工事に関連したデータ作成もサポートする。作成の難易度は低めだが、工事に必要な施工体制台帳や安全書類などの書類作成を建設ディレクターが担当すれば、それだけ現場技術者の負担は軽減する。写真の整理や各種申請の業務も、技術者に代わって建設ディレクターが担当できるだろう。業務経験を通じてスキルアップをすれば、建設ディレクターが活躍できる分野はさらに広がる。
建設ディレクターのICT関連業務では、ドローンの写真測量、レーザー測量、測量データの処理や点群データの処理などがある。田辺氏は、こうした業務に関わる建設ディレクターが日本各地で増えているとした。
従来の現場マネジメントでは、現場がオフィスから離れているために、情報共有がやりにくく、技術者が孤立する構造もあった。しかし、建設ディレクターがいれば情報共有が容易になり、技術者が重要な業務にだけ向き合える環境が作れる。
田辺氏は、建設ディレクターで課題解決した実例、建設ディレクターと現場技術者の連携例なども紹介した。
また、ハローワークに求人を出し、建設ディレクターとして人材の採用に至ったケースにも触れた。そのとき採用した人材はこれまで建設業の経験がなかった。しかし、建設ディレクター協会の「建設ディレクター養成講座」を受講しながら社内で図面の見方などの経験を積み、現在では技術者が作っていた書類の6〜7割を建設ディレクターがサポートまたは作成するまでに成長したという。
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