都が4月に「太陽光パネル義務化」 設置有り無しマンションで4968万円もの差、LIFULL HOME'Sが調査:産業動向(2/2 ページ)
LIFULL HOME'Sは、2025年4月から始まる東京都の太陽光発電の設置義務化に先立ち、気になる現状と今後を調査した。その結果、太陽光パネル設置物件は賃貸や戸建てで全国的に増加しているが、マンションは2024年までは減少傾向にあると判明した。住宅価格は、マンションで太陽光パネル設置有り無しで4968万円もの差額があり、条例施行によりさらなる高騰が懸念される。
条例施行で住宅価格はさらに上昇、住宅購入予定者が東京から転出も
また、東京都内で太陽光パネル設置物件の平均賃料と価格を物件種別ごとにリサーチしたところ、賃貸物件は全物件の平均賃料(50平方メートル換算)が15万6844円/月だったのに対し、太陽光パネル設置物件は16万5886円/月と約0.9万円の差となっている。
戸建て(100平方メートル換算)は全物件平均が5545万円、太陽光パネル設置物件が7991万円と2446万円の差で、マンション(70平方メートル)に至っては全物件平均が6520万円、太陽光パネル設置物件が1億1488万円と4968万円もの差額が生まれている。
中山氏は、「賃貸物件については太陽光パネル設置済みだと”光熱費込み”の賃料が設定されるケースもあり、割安な光熱費分が賃料に加算されている物件が徐々に増加している。太陽光パネルを設置しているマンションは条例制定に備えた新築/築浅マンションが圧倒的に多いため、高値の傾向にある」と分析する。
今回の調査結果を受けた総括で中山氏は、太陽光パネルが設置されていれば発電量に応じて電気の購入量が減少するため、使い方によっては光熱費の大幅な削減に効果があり、売電も可能なので経済的なメリットや効果が享受できると利点を挙げる。また、同時に施行される「改正建築物省エネ法」で新築住宅には断熱等級4以上、一次エネルギー消費量等級4以上の省エネ性能への適合が全国で義務化されるため、夏涼しく冬暖かい快適な住宅に住むことができる生活上の大きなメリットも生まれるとしている。
他方で課題については、太陽光パネルの反射による“光害”、太陽光を電気に変換する“パワーコンディショナーの稼働音”が設置場所によってはトラブルになる可能性を指摘する。
設置した太陽光パネルのメンテナンスや交換(パネルの法定耐用年数は17年で実際には20〜30年稼働可能)にはコストがかかり、太陽光パネルの設置はイニシャルコスト(導入費用)とランニングコスト(売電を含めた光熱費の軽減)をトータルで考えることが求められる。特にイニシャルコストは、円安による資材価格の高騰に人件費の上昇が加わり、住宅の価格も含めて住設関連のコストがさらに上昇する可能性が高く、住宅購入や賃貸で生活の利便性や快適性とコストを天秤にかけるプロセスを経る必要がある。しかし、現状は「東京ゼロエミ住宅」「災害にも強く健康にも資する断熱/太陽光住宅普及拡大事業」などの補助金制度を上手に活用してコストを低減させることができる。
併せて、都内で住宅購入することのハードルが極めて高い中で今回の条例が施行されることにより、住宅価格はさらに上昇し、「住宅購入予定者が東京から転出して周辺3県および以遠での住宅購入を検討する可能性が高まることはほぼ確実で、条例の制定によって“ファミリー層の郊外化”が一層促進されることになるだろう」と推察している。
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