Autodeskが建設業界の課題を徹底分析! コスト、人材、サステナビリティの視点と全体最適化が急務:建設業界でAI活用の可能性は?(2/4 ページ)
オートデスクは建設業界のさまざまな企業課題を分析し、未来への道筋を示す大規模調査「デザインと創造の業界動向調査2024」を公表した。調査レポートの説明会では、海外企業と日本国内企業の双方の視点から企業経営にまつわる課題を整理し、具体的な解決策となるAutodeskの最新技術を紹介した。特にビジネスレジリエンス向上で必要となるコスト、人材、サステナビリティの3要素に焦点を当て、業界の問題点とその先の可能性を探った説明会の内容を振り返る。
ビジネスレジリエンス向上に必要なコスト、人材、サステナビリティ
建設業界を含めて企業のビジネスレジリエンスに直接関わるポイントとして、キーとなるのがコストマネジメント、人材、サステナビリティの3つの視点だ。
コストマネジメントは、グローバル企業が挙げる「今年の最も重要な課題」として第1位となった。国内でも同じで、とりわけ建設業界ではその傾向が根強い。他業界と比べると、受注請負産業や入札/契約制度、現場ごとに損益計算を行うなどが要因となり、会社の損益を左右する重要なファクターだからだ。
ただ、コスト管理を重要視しているといっても、「情報の連携や統一、そしてリアルタイムの意思決定へのつながりには大きな課題がある」と高橋氏は言及する。
中でもプロセスと蓄積されたデータの分担化がネックとなっている。建設現場ではさまざまなツールを用いて、データを蓄積する。しかし、現場の進捗を記録する工事管理ソフトの乱立や原価管理では、Excelベースの管理による煩雑化、手入力による基幹会計システムなどを理由に重複した作業が多く、マニュアル変更時のリアルタイム連携などがボトルネックとなってしまう。
理想として高橋氏は「現場で利用されているデータをできるだけ一箇所に集め、ERPシステムとのつながりを強化し、プロセスの最適化をすることが重要だ」と語る。ただ、コストマネジメントはあくまで手段とし、「実行予算の精度を向上させるか、コスト削減か、それとも自動化か、目的によって導入する時のソリューションは変わる。しっかり具体的な目標設定をすることが大切だ」と具体的な改善点を説明する。
次に人材については、日本企業での人材獲得とトレーニングに対する課題感は高まっていると分析する。2023年の調査では人材獲得の課題を感じているのは41%だったのに対し、今回は44%と上昇。建設業界は、より深刻で60%が課題を持っていると答え、深刻の度合いは高まっている。背景の一つに高橋氏は「日本の大学でのデジタルやBIMの教育不足にある」と話す。
建築情報学やBIM教育の推進は国によって推進している主体は異なる。英国やシンガボールなどは、政府がBIM教育を進めており、中心的な役割を果たしている。一方、米国では大学や民間企業が積極的に新たな施策に盛り込み、政府の戦略や方針を基に学術と産業が緊密に連携している。しかし、日本はいずれの事例にも当てはまらず、体系的なデジタル教育や施策の推進で遅れを取っている。
高橋氏は「日本はBIM教育を提供する大学が少ない。そのため、企業にとってしっかりとBIM教育を受けている学生の採用が難しく、研修コストの増加に悩むケースが目立っている」と語る。
サステナビリティについては、向上に向けて取り組む国内企業の割合が96%を占め、短期と長期の両方の側面からビジネスの健全性を改善する手段として認識されている。
施策として重要となるのが、企業活動で排出するカーボン(温室効果ガス)の削減だ。建設活動でカーボン排出は、建物の建設や改修、解体などの段階に当たる「エンボディドカーボン(エンベデッドカーボン)」で世界の温室効果ガス排出量の約11%を占め、建物の使用、管理、維持といった運用時の「オペレーションカーボン」で約28%の計4割となっている。そのため、高橋氏は設計段階からの意思決定が、建物全体のライフサイクルでカーボン排出量を削減する効果があると改善点を提案する。
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