操縦者1人で全国4地点のドローン5機体を同時運航、NEDO×KDDI×JAL:ドローン
NEDOとKDDI、JALの3者は、1人の遠隔操縦者が全国4地点でドローン計5機体を同時に飛行させる実証実験を実施した。東京都の操縦室から埼玉県、北海道、千葉県、鹿児島県のドローンを遠隔で同時運航し、多数機向け運航管理システムと運用手順の有効性や課題を検証した。
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、KDDI、日本航空(JAL)は2024年11月、遠隔操縦者1人で全国4地点のドローン5機体を同時に運航する実証実験を実施したと発表した。
実証実験では、1人の操縦者が東京都品川区の操縦室から埼玉県の秩父エリアに配置したドローン2機をはじめ、北海道の新十津川エリア、千葉県の浦安エリア、鹿児島県の奄美エリアのドローン各1機を遠隔で飛行させた。2024年10月28日から31日にかけて実施し、機体はプロドローン製の「PD6B-Type3」を使用した。
イレギュラー対応を含む運航管理システムと運用手順の有効性や課題を検証
実証自体はNEDOの「次世代空モビリティーの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」のうち「ドローンの1対多運航を実現する機体・システムの要素技術開発」の一環として実施。KDDIは複数機の同時運航に対応した運航管理システムを開発し、JALが航空安全に関わる技術やノウハウをもとにリスク評価を行い、運用手順を策定した。
運航管理システムはヒューマンエラー防止の目的で、予期しない他機接近やバッテリー残量の低下などのイレギュラー発生時に、画面上のポップアップと音声により操縦者にわかりやすく通知し、対処方法をアドバイスする機能を追加。イレギュラーが発生してもシステムの支援を受けて、あらかじめ定めたオペレーションマニュアルに沿って、安全に運航を完了できることを検証した。
ドローンの遠隔自動操縦では、機体の運航状況や気象状況をモニターディスプレイでリアルタイムかつ精緻に監視し、必要に応じて手動操作を加える高度な運航管理が求められる。そのため今回は、5機の同時運航でシステムの自動化と情報集約を進め、操縦者とシステム(マン=マシンインタフェース)の役割分担を明確化した安全管理体制を構築した。
実証の結果、運航管理システムや運用手順の有効性を確認した一方、機体やシステムの不具合、運航環境の変化といったイレギュラーが同時に発生した場合の課題も確認され、今後のシステム機能や運航管理品質の向上に資するデータを取得できたという。
3者は今後、体系的な要件定義に向けて、さらなる実証実験や仮想的な環境を用いたデータの蓄積と検証を進める。
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