KDDIスマートドローンの自動離着陸「ドローンポート」とStarlink×移動LTE基地局は何が革新的か?:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2024(2/3 ページ)
さまざまな業界で導入が進むドローンだが、ユーザーが業務で使うには運用前に機体の選定だけでなく、用途に応じた通信技術や設備が必要となる。KDDIスマートドローンは、自律飛行する機体も含めたハードやソフト両面のトータルでドローン運用をサポート。特に現在注力しているのは、離着陸から巡回飛行、充電までを自動化するドローンポートと、電波がない場所に携帯電話のau基地局を構築できるStarlinkを活用した通信環境のサービスだ。
全自動でドローンの充電と格納ができるドローンポートがあれば、操縦者が現場に出向く必要はなくなる。施設で異常が検知されれば、監視センターなどに居る施設管理者がすぐにドローンを飛行させて、状況を確認することも可能になる。現状ではドローンポートに対応したドローンの機種が限られ、価格面でも課題はあるが、ほぼ完全自律の定期飛行が可能になったことで、点群データを毎日取得して日々施工進捗が移り変わる現場を3D化する施工管理のデジタルツインなど用途の幅が広がることは間違いない。
Starlinkで、携帯電話の電波がない場所に通信環境を構築
ドローン機体と並びKDDIスマートドローンが力を入れているのが、Starlinkを介した携帯電話基地局のソリューションだ。
Starlinkは衛星を通じ、地上のあらゆる場所に通信環境を作れる通信設備。一般的にはLANなどのネットワーク通信に使われることが多いが、KDDIスマートドローンが展示したのは、auの基地局に活用するソリューションだ。
山間部でのダム工事など、携帯電話の電波がない場所で工事期間中だけ通信環境が必要となることは多い。ドローン機種の中でも、飛行時にモバイル通信を必要とするものもあり、こうした機種は電波がないとリアルタイムのデータ送受信ができない。電波がなければ運用も限られ、ドローンのメリットがかなりスポイルされてしまうが、Starlinkを使った携帯電話の基地局は解決策となる。
KDDIスマートドローンが提供する機器構成は、パネルのようなStarlinkのアンテナそのものとともに、Starlinkのアンテナに接続する移動可能な携帯電話基地局のモジュール、基地局用アンテナのセットだ。Starlinkは、上空が開けている場所であれば衛星とデータのやりとりができる。携帯基地局のモジュールは、Starlinkのデータを携帯電話の電波に変換する。セットに含まれる携帯基地局のアンテナは、基本的には一般の携帯電話の基地局で使われているものと同じ。設置場所にも左右されるが、アンテナを中心におおむね半径1キロの範囲で通信環境を構築できるという。
実は、携帯電話の基地局はドローン関連以外でも活用されているという。代表的なものがトンネル工事坑内外の連絡手段だ。トンネル工事は土の中で行われるため、基本的に携帯電話の電波は届かない。そこで、これまではWi-Fiを整備して通信手段を確保するケースが多かった。
しかし、Wi-Fiは電波が遠くまで届かず、トンネル内に多くの中継するアンテナ機器を設置する必要があったが、工事の邪魔になる場面もあった。大型の掘削機を出し入れする際は、アンテナをいったん撤去してまた設置するといった煩雑な作業が生じていた。
対して携帯電話の電波であれば、直線的なトンネル内ということもあり、多数のアンテナを必要としない。北海道新幹線の渡島(おしま)トンネルの現場では、トンネル内の4.5キロで携帯電話のアンテナ子機を2台設置するだけで通信が可能になった。ちなみに、アンテナの子機は、A4サイズしかない。コンパクトなので作業の邪魔になりにくく、移動の負担も少ない。
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