ジョンソンコントロールズCEOに聞く、AIとIoTで進化するスマートビルの近未来:BAS(2/3 ページ)
世界的な脱炭素の潮流を受け、CO2排出量の4割を占めるともいわれる建物にも省エネ化の波が押し寄せている。特にオペレーションカーボンにあたるビルの管理運用で、いかにして今以上にCO2を削減するかが課題となっている。日本で50年以上の実績がある多国籍企業ジョンソンコントロールズは、スマートビルの実現にどう対応していくのか。来日したジョンソンコントロールズの会長兼最高経営責任者(CEO)ジョージ R オリバー氏にインタビューを試みた。
独自技術でビル全体のオペレーションを最適化
――ジョンソンコントロールズが提供するBASについて
一般的な建物に対しては、BEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)の機能を備えたBAS「Metasys(メタシス)」を主力製品として展開。ビル設備を一元的に制御することで、スマートで持続可能なビルの実現を目指している。
Metasysにより個別に稼働しているさまざまなシステムを1つのプラットフォームに統合することで、ビルに関するデータを活用できるようになり、建物内で働く従業員の快適性の向上や建物の価値向上につなげている。
また、MetasysをOpenBlueと連携させることで、IoTやAI技術を活用した高度な分析も効率的に実現する。最新のテクノロジーを導入したビルは、屋内環境の高い快適性やエネルギー効率だけでなく、情報の自動連携による個別化された体験など、既存の建物にはない価値を提供できる。ビルで働く従業員体験(Employee Experience)の向上は、従業員エンゲージメントの向上にもつながるだろう。
――人手不足への対応と人材育成の取り組み
ジョンソンコントロールズの技術を展開する上で、質の高い人材の確保は欠かせない。そのためには次世代の若手が働きたいと思うような魅力ある会社であることが重要だ。当社でも、有能な人材を引き付け、定着させるための対策に注力している。
次世代を担う若手社員の育成では、日本では新卒の理系人材向けに最先端の技術に触れられる研修プログラムを提供し、即戦力となる人材の育成に成功している。これは当社の中ではグローバル ベストプラクティスだ。
労働力不足に関しては、少人数で効率的なメンテナンスを実現できる自社技術により業務効率化を図っている。さまざまな設備をネットワークに接続することで、リモートでの保全や診断を可能にし、収集したデータを活用したオペレーションの効率化も可能になった。
ジョンソンコントロールズはグローバル市場で求められる高度な技術を持つエンジニアを確保するため、戦略的にCoE(センターオブエクセレンス)を設置している。インドに開設したCoEには高い専門性を持つ優秀な人材が集結し、世界の様々な拠点にサポートを提供している。
当社ではかつて、米国で開発した製品を各国に提供していたが、現在はインドのCoEが中心的な役割を果たしている。インドのエンジニアには日本語が話せる人材もおり、現地から日本市場へのサポートも行っている。
一方、日本国内にも大規模なエンジニアリングチームを設置し、ソリューションの開発や展開において、ローカルで活躍している。このローカルでの人材育成とグローバルな人材活用を組み合わせることで、各地域のニーズに合わせた最適なソリューションの提供が可能になる。
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