「脱炭素社会実現の切り札!」 再エネのムダを無くす“2代目おひさまエコキュート”:スマートハウス(1/2 ページ)
パナソニック 空質空調社は「空気から、未来を変える。」をブランドステートメントに据え、製品とサービスを展開してきた。2024年1月にはブランドステートメントの範囲に「水」を加え、今後は水関連の事業にも注力すると宣言。エコキュートの新モデル「おひさまエコキュート」はその方針に沿い、エネルギーや環境といった社会課題に対するパナソニックの姿勢を示す一例ともいえる。
パナソニック 空質空調社は2024年8月23日、滋賀県草津市の草津拠点でエコキュートの新製品「おひさまエコキュート」を発表した。太陽光発電設備を持つ家屋をターゲットにした製品で、主に昼間に発電した電力を使うのが従来製品との大きな違い。日射量の予報と連携した「日射量シフト」やスマホのアプリによる設定変更/お湯はりなども可能で、タンク容量と吐出水圧違いによる4機種の展開で発売日は2024年10月26日の予定だ。
発表会では、パナソニック 空質空調社 日本・広域事業担当 水ソリューションズビジネスユニット BU長 福永敏克氏がエコキュート事業を取り巻く環境と社会背景を受けたパナソニックの考え方をプレゼン。マーケティング担当 マーケティング本部 日本マーケティングセンター 電化マーケティング統括部 統括部長 松尾圭氏はおひさまエコキュートのマーケティング戦略を紹介した。
省エネのエコキュートがパナソニック 空質空調社の技術でさらに進化
エコキュートの正式名称は「自然冷媒ヒートポンプ給湯機」。冷媒をヒートポンプユニットで圧縮する際に発生する熱を利用して湯を作り、タンクに溜めて浴室や台所での給湯に使うシステムだ。
エコキュートは、冷媒が大気中の熱を取り込む。全てを電力で賄うのに比べ、約3分の1の電力使用量で湯を沸かせられる。電気代が割安な夜間や深夜の電力を使えば、さらにコストを抑えられるメリットもある。
エコキュートはパナソニック以外のメーカーでも製造しているが、基本原理と機器の構成、メリットなどに大きな違いはない。今回パナソニックが発表した新しい「おひさまエコキュート」は、太陽光発電を積極的に組み合わせることで、購入する電力量を低減できる。また、パナソニック独自の機能(後述)も搭載し、他社製品とは異なる個性が感じられる。
なお、今回発表された製品は、パナソニックのおひさまエコキュートとしては2022年4月に販売を開始した初代に次ぐ2代目となる。
昼間の発電を給湯に活用 購入電力量を減らして給湯コストを下げる
エコキュートは、エコの名から想像がつくように、給湯コストを抑えられる設備だ。一般的なエコキュートは、夜間の割安な電力を利用して湯を作り、保温性を備えたタンクに溜めることで、ガス給湯器に比べて給湯コストは約2分の1で済む。
おひさまエコキュートは太陽光発電の設備を前提としているため、夜間ではなく、昼にお湯を沸かす。その点が従来のエコキュートと大きく異なる。
エコキュートで太陽光電力を活用する理由として福永氏は、「太陽光発電を中心とする再エネの出力制御」を挙げる。
日本政府は、2050年の温室効果ガス排出量ゼロの実現に向け、再エネに関する強化と導入の拡大を打ち出した。太陽光発電は再エネの約4割を占め最も割合が大きいが、導入が進んだ結果、天気が良い日には火力発電を調整しても、全体の発電量が消費量を超過して無駄になってしまう事態が増えている。
各家庭の太陽光パネルが発電した電力は、電力会社の電線網(系統電源)に流される。しかし、電線網には容量があり、それを超える電力を流すことはできない。そこで、太陽光パネルが発電した電気を電線網に流す際に“制限”する必要が出てきた。
再エネに対する出力制御は、2022年度までは特定地域を中心に実施していたが、2023年度にはほぼ日本全域で行われるようになった。制限量は18.9億kWh(キロワット時)で、2022年度の5.7億kWhの約3.3倍となる。
福永氏は「せっかく導入された再エネをムダにしてしまっている。その原因は太陽光の発電がピークになる時間帯と電力の需要の多い時間帯がズレてしまっていることにある」と話す。
また、福永氏は、太陽光発電の買い取り価格が年々下がっていることに加え、過去に太陽光パネルを設置したユーザーは設置後10年の経過で固定価格での買い取りが終了する問題にも触れた。個人宅の太陽光発電は、全体の発電量が増えたために供給過多になり、発電した電気が系統に流せず、仮に流せたとしても買い取り価格は以前より安い。
パナソニックの新おひさまエコキュートは、こうした状況を踏まえ、太陽光発電による電力を効果的に活用できる仕様となっている。
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