黒川紀章の「中銀カプセル」をトレーラーハウスに“リデザイン”、工学院大:プロジェクト
工学院大学 建築デザイン学科 教授 鈴木敏彦氏は、黒川紀章氏が設計した“メタボリズム建築”を代表する「中銀カプセルタワー」のカプセルをCLT構造のトレーラーハウスにリデザインした。
工学院大学 建築デザイン学科 教授 鈴木敏彦氏は2024年6月12日、淀川製鋼所とともに、「中銀カプセルタワー」のカプセルを移動可能な形状に進化させた「CLT CAPSULE 2024」を開発したと発表した。
メタボリズム建築からニューノーマル時代の動くカプセルへリデザイン
中銀カプセルタワービルは、建築家の黒川紀章が建築設計した東京都中央区銀座にかつてあったコンテナユニット型のマンション。近未来を想起させる外観が印象的で、各戸のカプセルを交換をコンセプトに“メタボリズム建築”の実現を目指し、1972年に完成した。
老朽化や壁に使われていたアスベストが問題となり、一度計画が中断していたものの、2022年4月に解体が始まり、同年9月に二十数体のカプセルが取り外された。淀川製鋼所は2023年にその1つを譲り受け、鈴木敏彦氏が共同主宰する建築デザイン事務所のATELIER OPA(アトリエオーピーエー)とともに、動くトレーラーカプセル「YODOKO+(ヨドコウプラス)」へと再生した。再生の過程ではカプセル内壁のアスベストを完全除去し、不要な構造体の間引きたスケルトンで軽量化に加え、内装を修復し、2023年4月から東京、大阪、名古屋の展示会で順次公開した。
今回の2024年版のCLT(直交集成板)カプセルは、黒川紀章氏が提唱したカプセル建築の思想を次世代へ継承するべく、環境配慮の視点を新たに持たせてリデザインした。移動可能なCLTカプセルは、ニューノーマル時代の自宅以外の拠点やグランピングにも活躍するトレーラーハウスとなる。
カプセルの構造体に用いた国産のスギ材を使用したCLTは、森林の保全や温室効果ガス排出量の削減に貢献する。外装は、複合塗膜防水層として高強度ウレタン/ゴムアスで白く仕上げ風雨からCLTの車台を保護する。一見すると、従来のカプセルと同じに見えるが、内装はウッディでリラックスした趣があり、インテリアも中銀カプセルタワービルが当時最先端のTVやステレオを設置していたように、LED照明や最新のデジタル機器を搭載している。
プロジェクトの各役割は、カプセルのデザイン監修を黒川紀章建築都市設計事務所に勤務した経験もある鈴木敏彦氏が手掛けた。設計は鈴木氏が共同主宰する建築デザイン事務所のATELIER OPA(アトリエオーピーエー)、構造設計は桜設計集団構造設計室、CLT製作は銘建工業、外装はエフワンエヌ、車体はトレーラーハウスデベロップメント、家具は多田木工製作所、LED照明が遠藤照明が手掛けた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 製品動向:中層建物のカーテンウォールをユニット化、工期を3分の1に短縮
YKK APは、ユニット工法を中層建築物に展開したカーテンウォール「SYSTEMA 81u」を4月30日から全国で発売する。従来の足場を設置して組み上げる工法と比較して、工期を約3分の1に短縮する。 - 建築設計×コンピュテーショナルの現在地:落合陽一氏の万博パビリオンを手掛けた「NOIZ」が語る「フィジカルとデジタルの境界に浮かぶ未来の建築設計」
大阪・関西万博で、テーマ事業プロデューサーの落合陽一氏が企画するパビリオン「null2」の設計を手掛ける「NOIZ」は、建築のフィジカル要素とコンピュテーショナルデザインなどのデジタル技術との融合で、新しい建築設計の可能性を模索している。null2で具現化を目指す、未来の建築デザインをNOIZの設計担当者に聞いた。 - Building Together Japan 2023:明大 生田新校舎で挑戦した日建設計の設計BIM 基本計画から実施設計まで「BIMで考える、BIMと考える」
日建設計の茂住勇至氏は、明治大学 生田キャンパスの新校舎設計で、プロポーザル段階から、基本設計、実施設計に至るまで、BIMソフトウェア「Archicad」を活用した。設計業務では、基本計画の大学側との合意形成や日影シミュレーション、100分の1の詳細度でBIM作成などの新たな設計BIMの試みに挑んだという。 - 温故創新の森「NOVARE」探訪(前編):新たな芽をいつか森に、清水建設がイノベーション拠点でゼネコンの枠を超えて目指す姿
スマートイノベーションカンパニーを目指し建設を超えた領域でのイノベーションを推進する清水建設。イノベーション創出のための重要拠点として新たに2023年9月に設立したのが「温故創新の森『NOVARE』」だ。本稿では、前編でNOVAREの全体像を紹介し、後編ではDXによる新たな空間創出への取り組みを紹介する。 - デジタルファブリケーション:3DプリンティングとCO2固定化コンクリで、環境負荷低減の“友禅流し”ベンチ製作 金沢工大と鹿島建設
金沢工大と鹿島建設は、CO2で固まるコンクリートを素材に用い、3Dプリンティングで公園のベンチを製作した。今回の産学連携の取り組みで、設計から製造に至るプロセスのデジタル化と、景観に馴染む意匠を表現するための複雑な形状の実現を実証。さらに、3DプリンティングとCO2-SUICOMの融合で、セメント系造形物として、カーボンネガティブとなる3Dプリンティング製作を達成した。 - 電子ブックレット(BUILT):日建設計が病院設計で試みた“BIMのデジタルリレー”
ウェブサイトに掲載した記事を印刷しても読みやすいPDF形式の「電子ブックレット」にまとめました。無料のBUILT読者会員に登録することで、ダウンロードすることができます。今回のブックレットは、日建設計がBIMの建物情報「BI(ビルディングインフォメーション)」に着目し、大学病院の設計案件で試みたBIM連携=デジタルリレーを紹介します。