エンジン発電で“11時間半飛行”するドローン アミューズワンセルフの「はかる」に特化した製品開発:メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023(3/3 ページ)
日本の災害では、有人のヘリコプターでは対応できないケースが多いとされている。家のすぐ裏で斜面が崩れる被害が多い日本では、ヘリコプターを飛ばすことでさらなる崩落を誘発する危険性がある。こうした災害現場の現状把握に、ドローンは有効となる。
高速測量に対応したレーザー測量ソリューション
冨井氏は、レーザースキャナーに関して、汎用型「TDOT7 NIR」とフラグシップモデル「TDOT7 NIR-S」、水中も測量するグリーンレーザー「TDOT3 GREEN」の3製品を採り上げた。アミューズワンセルフのレーザー機器は、全て国土交通省のNETIS(新技術情報提供システム)に登録されている。
TDOT7 NIRはRIEGL(リーグル)製のレーザーユニットで、毎秒30万点を計測。操作系はグラフィカルで、スキャン中の断面をリアルタイムで表示する。レーザーの他に可視カメラとサーモカメラも搭載。冨井氏は、「可視カメラでは天空に着色、サーモカメラでは温度情報を付与できる。斜面からの洪水など、可視カメラでは分からないものを見つけられる」とした。
この他、TDOT7 NIRはLTE通信の機能で、スキャンデータをリアルタイムに演算し、そのデータをクラウドサーバに共有する。
フラグシップモデルのTDOT7 NIR-SとTDOT7 NIR との違いは、圧倒的な計測速度にある。毎秒30万点の計測能力のTDOT7 NIRに対し、TDOT7 NIR-Sは毎秒200万点を計測する。
TDOT3 GREENは、水に吸収されにくいグリーンレーザーを使用することで、陸上と水中の測量に対応。他社が販売するグリーンレーザーのスキャナーに比較してかなり小さく、本体の重さも2.7キロしかない。そのため、測量の分野で普及しているDJIのMatrice 300 RTKにも取り付けられる。
アミューズワンセルフのドローンは2023年初頭には、累積のフライト回数が5万5000回を突破している。圧倒的なフライト数だが、その背景には、測量大手のパスコが開発した「TDOT-SmartSOKURYO(ティードット スマートソクリョウ)」というアプリケーションの存在だ。
ドローンを使った測量はさまざまな使い方があり、ドローンを飛ばしさえすれば簡単に行えると思われがちだ。しかし、対空標識の設置や多くの帳票類の整理など、測量の経験者でないと難しい部分も多い。その点、TDOT-SmartSOKURYOにはドローンによる高速測量のノウハウが多数投入されている。冨井氏は「TDOT-SmartSOKURYOを使うことで、ドローン測量に必要な周辺作業の軽減が図れる」と語った。
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