ICT活用で施工管理に変革の兆し 重責ある“5大管理”を効率化!【連載第6回】:建設ICTで切り拓く、現場の安全衛生と生産性の向上(6)(2/3 ページ)
連載第6回は、4大または5大管理と呼ばれる建設業の施工管理にフォーカス。施工管理を効率化する建設ICTツールとして、施工管理アプリや特殊カメラ、レベル4解禁後でも普及が進まないドローンなど、それぞれのメリットと現状の課題などを踏まえながら解説します。
施工管理をデジタル変革するICTツールや技術
ICTを活用して現場業務を改善していく動きが、i-Constructionや建設DXの取り組みが加速する中で顕著になっていることは、皆さんも実体験としてご存じだと思います。本章では、当社が建設業向けにさまざまなツールを提案し、導入を進める中で、施工管理業務で有用と感じたツールや技術をとり上げていきます。
(1)スマートデバイス(スマホ、タブレット)を活用した施工管理アプリ
現場責任者は、前章でも触れた通り、4大管理をこなす必要があり、工程管理や進捗管理、原価管理などの作業指示をはじめ、役所への事務手続きといった多くの作業があります。施工管理サービスは、工程表の作成、建設現場の写真や図面などの情報共有、コミュニケーションといった作業をサポートし、管理者の負担を軽減するツールです。
スマートデバイスは、施工管理サービスとの相性が良く、現場でも採用が進んでいる組み合わせです。最近のスマートデバイスは、高性能かつ軽量で携帯するのも容易です。ネットワークさえつながれば、リアルタイムで音声や映像の共有が可能なため、現場のICT化で一番活躍しているデバイスといえるでしょう。
こうしたシステムは、現場作業員と現場監督をスマートデバイスとネットワークでつなぐことで、工程表など各種書類の共有や報告業務のリアルタイム対応を実現し、円滑な管理業務の支援を目的としています。これまでの紙を主体とした報告業務を考えると、報告業務が現場で行えることは、担当者にとって大きな変革ではないでしょうか?何しろ、事務所に帰ることなく報告ができるため、建設業界の課題の1つとなっている“働き方改革”にもつながる仕組みです。
スマートデバイスを活用した建設業向けサービスの中で、特に需要が高いのが、クラウド型の施工管理サービスです。多くのITベンダーが参入しており、TV CMなども活況です(CMを最初に見たときは、施工管理でもICT活用が身近になってきたと、びっくりしました)。
スマートデバイスがさらに高性能化し、高速ネットワーク帯域も拡大すれば、これまで高性能PCでしか扱うことができなかったBIM/CIMといった高負荷なシステムも、身近なものになるでしょう。
(2)特殊カメラを使った映像の活用
最近のスマートデバイスに搭載されているカメラは、高性能かつ多様化しています。その中で、スマートデバイスでは実現できない特殊なカメラとして、「360度カメラ」をピックアップします。
360度カメラの強みは、なんといっても360度の全方位を漏れなく撮影できることです。最近では、360度カメラを建設現場で使っている例も多くみられるようになりました。360度カメラで撮影した静止画像データや動画データを、巡視業務でのエビデンスとしたり、施工の進捗チェックで利用したりしているケースもあります。
有用なデータを収集できる360度カメラですが、そのデータをさらに有効活用するためには、専用アプリケーションやサービスとの組み合わせが重要です。なぜなら、360度映像データを図面や地図上にマッピングして撮影位置を可視化したり、映像にメモを貼付することで情報共有を図ったりすることで、利用用途がより拡大するからです。360度カメラを導入しているけれど、データ単体利用のみで使いこなせていないという方は、専用のアプリケーションやサービスとの組み合わせをオススメします。
360度全方位を撮影できるという特性もあって、BIM/CIM、AR/VR、デジタルツインといった3次元技術との親和性も高く、今後も利用拡大が期待されるツールの一つでしょう。
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