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建設業を悩ます“2024年問題”【後編】完全適用を前に、今備えるべきこと緊急寄稿「時間外労働の上限規制」を徹底解剖(2/2 ページ)

2024年4月1日、5年間の適用猶予期間を終え、建設業でもいよいよ罰則付きの時間外労働の上限規制が始まる。違法と認められた場合、罰則が科されるおそれがあり、悪質なケースでは厚生労働省が企業名を公表することになる。法適用まであと数カ月と迫った今、建設業が何をすべきかを考える。

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2024年問題に備えて、すぐに始めるべきこと

 とはいえ、改正法の適用は間近である。何もしなければ、罰則が科され、最悪の場合は企業名を公表されるおそれもある。

 また、働き改革関連法により2023年4月以降は、中小企業も月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率を引き上げなければならなくなっている。時間外労働の削減は、中小規模事業者にとって、事業継続性においても死活問題である。

 では、何ができるだろうか?

待った無しの状況にあって、時間外労働の削減のために何ができるか
待った無しの状況にあって、時間外労働の削減のために何ができるか Photo by Pixabay

 まずは、従業員の労働実態を正確に把握することだ。従業員の労働時間や休日の取得日数を可視化し、そのうえで人員の配置を見直したり、デジタル技術などを活用して業務の効率化(DX)を図ったりしながら、時間外労働が法の範囲内に収まるよう努力≫することが求められる。

 建設業界で一般化している日給月給制の見直しも必要だろう。日給月給制では、日単位で給料の支払いが決まるため、労働日数が増えがちになる。一方で、1日の労働時間への意識が低くなりやすく、長時間労働を助長する遠因にもなっている。

 日給月給制から月給制に改めることで、従業員の雇用の安定を図り、従業員が休んでもいいと思える環境を整えることが重要だ。働き改革関連法のテーマの1つ、「年次有給休暇の確実な取得」の達成も、その先に見えてくる。

 一方で、人員的にも金銭的にも余裕のない中小規模事業者だけで、課題を解決することは難しい。彼らに発注する大手ゼネコンやクライアントも、工期が長めになることによるコスト増加を許容する中小規模事業者が月給制を維持できるように、年間を通じて発注するなどの協力が不可欠だ。

 「きつい、汚い、危険」の3Kと揶揄(やゆ)される建設業界――。現状のままでは、人手不足がより深刻になるのは明らか。時間外労働の上限規制を「問題」として捉えるのではなく、より魅力的な業界に変える契機と考え、恐れることなく、働き方の変革に挑んでほしい。

監修者Profile

歌代将也/Masaya Utashiro

うたしろFP社労士事務所 代表、合同会社ポジティブライフデザイン 代表

大手製紙メーカーで人事労務、経営企画、財務、内部統制、労働組合役員など、さまざまな職種や業務を経験し、在職中に社会保険労務士やFPの資格を取得。退職後、「うたしろFP社労士事務所」を開設し、人事や賃金の制度作成アドバイスや各種研修/セミナー講師などを行っている。

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