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明大 生田新校舎で挑戦した日建設計の設計BIM 基本計画から実施設計まで「BIMで考える、BIMと考える」Building Together Japan 2023(3/4 ページ)

日建設計の茂住勇至氏は、明治大学 生田キャンパスの新校舎設計で、プロポーザル段階から、基本設計、実施設計に至るまで、BIMソフトウェア「Archicad」を活用した。設計業務では、基本計画の大学側との合意形成や日影シミュレーション、100分の1の詳細度でBIM作成などの新たな設計BIMの試みに挑んだという。

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3Dの空間共有で、大規模吹抜け空間の採用に

 基本計画でBIMが生きたのは、合意形成の場面だった。基本計画の打ち合わせには明治大学から複数の担当者が参加することになっていた。そのため、茂住氏は3Dのラフパースを積極的に使って、空間構成を共有することに努めた。茂住氏は「情報共有によってプロポーザル時には含まれていなかったセンターコモンズという大規模吹抜け空間を、プロポ受託後に採用できた」と、その成果を強調した。

 新校舎内に設ける図書館には、用途上、家具や什器を大量に配置する必要があり、書架オブジェクトの幅や段数から収蔵冊数を集計する数式を組んだ他、Archicadの「表現の上書き機能」で、冊数や座席数を一覧表で常に確認できるフォーマットを作成した。茂住氏は「平面図にゾーンの色分けを自動でしてくれる機能だけでも、作業負担が軽減された」と語る。

低層部図書館の検討
低層部図書館の検討

 構造と設備の設計でも、Archicadの機能で省力化につなげた。今回のプロジェクトは、本来は15メートルの高さ制限がある敷地に、許可申請を経て高さ31メートルの建物を建てる計画のため、限られた階高で最大限の気積を確保する空間構成と、それに適した空調方式の選択が不可欠だった。

 そこで茂住氏は、プレキャストコンクリート(PCa)床版を構造フレームに用いた空間構成と、低層部3階までは床吹出し空調、4階以降は共用部廊下に通したダクトと天井のPCa床版の間に配したパネルを使った放射(輻射)空調を採用した。

 構造フレームと空調方式の決定後は、構造と設備との取り合いのスケッチを何度も描き、BIMで再現してチーム内で検討を重ね、その結果を社内の設備BIMチームと共有した。「全フロアではないが、課題になりそうな箇所でBIMを用い、事前の設計段階で発見した」(茂住氏)。

構造や設備(ダクト)の簡単なBIMモデルを意匠側でまず作成し、それをもとにチーム内でコミュニケーションを図り方針を決め、社内の設備BIMチームに渡した

 外装計画と構造とが密接に絡む部分は、意匠側で簡単な構造モデルを作成。Archicadの「表現の上書き機能」でフロアラインからはみ出す梁(はり)や現場緊張を入れる梁、二重スラブの部分などを確認できるようにして、毎週の定例会議に諮り、少しずつ問題を解決するフローで取り組んだ。

構造設備取り合いの検討。BIMによる検証の結果、軒天レベルをフラットでそろえられた。フロアレベルからバルコニー空間に逆梁で飛び出す部分は、ベンチとしての活用や什器の中に紛れ込ませるなど、デザイン性に発想を転換した(下図)
構造設備取り合いの検討。BIMによる検証の結果、軒天レベルをフラットでそろえられた。フロアレベルからバルコニー空間に逆梁で飛び出す部分は、ベンチとしての活用や什器の中に紛れ込ませるなど、デザイン性に発想を転換した(下図)

 日射遮蔽(しゃへい)効果のシミュレーションは、Archicadの「日影シミュレーション機能」を用い、基本設計から徐々に実施設計のフェーズに移っていく過程での矩計図の検討、基本設計などでよくある色分け図などにはArchicadの「表現の上書き機能」などを活用した。

柱型形状や庇の出による日射遮蔽効果のシミュレーションは、簡易なものだがArchicad内の日影シミュレーション機能で、柱の形状や庇の出による影の出方を検証した
柱型形状や庇の出による日射遮蔽効果のシミュレーションは、簡易なものだがArchicad内の日影シミュレーション機能で、柱の形状や庇の出による影の出方を検証した
左側がAutoCADで作成した基本設計段階の矩計図。右側が実施設計初期のBIMデータをもとに作成した矩計のラフレイアウト。同じレイアウトをBIM側でも作り、適宜重ね図などで利用することにチャレンジした
左側がAutoCADで作成した基本設計段階の矩計図。右側が実施設計初期のBIMデータをもとに作成した矩計のラフレイアウト。同じレイアウトをBIM側でも作り、適宜重ね図などで利用することにチャレンジした

 外構整備もかなり広範囲にわたるため、ArchicadのBIMモデルをランドスケープチームが使用していた3Dモデルと、Lumion上で統合して情報共有した。

 面積表も、Archicadアドオンの「MassPlan(マスプラン)」でExcelに書き出している。概算数量は、壁種などをあらかじめ設計レベルで丁寧に作っておくと数量拾いは楽になるが、算出された数量をセルフチェックする必要があると感じたとのことだ。

ランドスケープチームとは、チームが使用する3DモデルとArchicadのBIMモデルをルミオン上で統合して情報共有した
ランドスケープチームとは、チームが使用する3DモデルとArchicadのBIMモデルをルミオン上で統合して情報共有した

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