「有事への備え」――石油・LPガス備蓄の現状と水素等へのタンク転用:エネルギー管理(3/4 ページ)
電力インフラのレジリエンスを考える上で、災害時にはエネルギー供給の「最後の砦」と位置付けられている石油。昨今の不安定な国際情勢や脱炭素化の流れを受け、資源エネルギー庁では今後の石油備蓄の在り方についての検討を進めている。
日本のLPガス備蓄の現状
1981年の石油備蓄法改正により、LPガス輸入業者に対する民間備蓄義務(50日)が開始されたのち、2005年から国家備蓄が開始された。
日本の石油ガス(LPガス)備蓄は、①国が保有する「国家備蓄」と、②石油備蓄法に基づきLPガス輸入業者が義務として保有する「民間備蓄」で構成されており、2023年8月末時点の備蓄量は、国家備蓄:139万トン(53日分)、民間備蓄:205万トン(73日分)である。LPガス国家備蓄基地は図5の5カ所で、合計150万トンの容量である。
なおLPガスについては、近年、アメリカやカナダからの輸入が増加していることに伴い、中東依存度は、ピークの2007年度91%から2022年度には約7%に低下している。
2022年の国家備蓄石油の売却
日本はこれまで、1991年の湾岸戦争などによるIEA石油備蓄協調放出を行ってきたが、いずれも民間備蓄石油に限られた放出であった。
しかしロシアのウクライナ侵攻に起因する国際エネルギー市場の逼迫(ひっぱく)に対応するためのIEA協調行動として、2022年4月に日本では初めての国家備蓄石油の放出(946万バレル)が行われた。これ以外にも、「油種入替」の前倒しとして、石油備蓄法に反しない形で国家備蓄石油の一部売却が行われている。
油種入替とは、供給途絶が発生した際に国家備蓄を機動的に使用し、精製を行いやすくするために、備蓄している原油の種類を随時入れ替えて、日本が輸入している原油の構成に近づける仕組みである。
直近では、コロナ禍からの世界経済の回復による原油価格高騰に対して、米国や関係国との協調を勘案し、2021年12月以降、410万バレルの国家備蓄原油が売却された。
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