「有事への備え」――石油・LPガス備蓄の現状と水素等へのタンク転用:エネルギー管理(2/4 ページ)
電力インフラのレジリエンスを考える上で、災害時にはエネルギー供給の「最後の砦」と位置付けられている石油。昨今の不安定な国際情勢や脱炭素化の流れを受け、資源エネルギー庁では今後の石油備蓄の在り方についての検討を進めている。
日本の石油備蓄の現状
日本ではオイルショックを契機として、1975年の石油備蓄法制定により民間備蓄が法的義務化されたのち、1978年には国家備蓄が開始された。
国は石油備蓄法に基づき、毎年、当該年度以降5年間の石油及び石油ガス(LPガス)の備蓄数量や新たに設置すべき貯蔵施設に関する目標を策定しており、最新の備蓄目標は表1のとおりである(※石油1バレル≒0.159kl)。
現在の日本の石油備蓄は、①国が保有する「国家備蓄」、②石油備蓄法に基づき石油精製業者等が義務として保有する「民間備蓄」、③UAE(アラブ首長国連邦)、サウジアラビア及びクウェートとの間で実施する「産油国共同備蓄」で構成されており、それぞれの備蓄量は表2のとおりである。IEA基準ではタンクのデッドストックを控除して日数を計算しているのに対して、備蓄法基準はデッドストック分も含めて日数を計算している。
これまでの国家備蓄と民間備蓄の量的推移は図3のとおりである。
国家備蓄原油は、10カ所の国家石油備蓄基地に備蓄するほか、借り上げた民間石油タンク(製油所等)にも備蓄しており、石油やLPガスの備蓄に関する2023年度予算は1,280億円に上る。これらの費用は固定的経費であるため、基地を維持したままで備蓄量を減少させるだけでは費用総額はそれほど変わらない。費用を大幅に減少させるためには、基地の再編・削減が必要となる。
国家石油備蓄基地は北海道から九州まで立地が分散していることにより、リスクの分散ができているが、いずれの基地も完成から30年以上が経過しており、今後老朽化する施設をどのように効率的に保全していくかが課題とされている。
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