鹿島建設、床版取替の施工を高速化 工期最大85%短縮:施工
鹿島建設は、床版架設の工期を最大85%短縮できる「スマート床版更新(SDR)システム」を高速道路の床版取替工事に初適用した。SDRシステムの導入により床版取替工事に伴う交通規制の短縮が可能になる。
鹿島建設は2024年1月10日、道路橋床版架設の工期を短縮できる「スマート床版更新(SDR)システム」を、関越道阿能川橋(群馬県利根郡みなかみ町)と、広島道奥畑川橋(広島県広島市)の床版取替工事に初適用したと発表した。
標準的な工法では1日7時間当たり3枚が一般的とされる床版取替において、阿能川橋では12枚、畑川橋では22枚の床版を架設し、工期を75〜85%短縮できることを確認した。
床版取替では、(1)既存床版の撤去、(2)主桁ケレン(鋼桁の上フランジのケレンと防錆剤を塗布する作業)、(3)高さ調整(硬質ゴムとソールスポンジを設置する作業)、(4)新設床版の架設作業の、4つの工程を繰り返していくのが一般的だ。
鹿島建設が開発したSDRシステムは、4つの工程を専門班が各エリアで、同時並行にて実施する。これにより、大型クレーン1台を使用する標準的な施工方法と比較して、既設床版の撤去から新設床版の架設までの一連の作業に要する時間を、全断面取替で約6分の1、幅員方向分割取替で約10分の1に短縮できる。
SDRシステムでは大型クレーンは使用せずに、軽量の床版撤去機と床版架設機を使って作業する。このため、施工時に機械設備の重量が鋼桁に与える影響を2分の1〜3分の1に低減する。
奥畑川橋は施工を完了、阿能川橋では2024年に2期、3期工事を実施
今回、SDRシステムを適用した奥畑川橋(全長215メートル)では床版取替工事が完了。阿能川橋(全長628メートル)では1期工事90メートル分が施工された。2024年に施工する阿能川橋の2期、3期工事では、施工範囲がそれぞれ約270メートルに増加し、工期がさらに短縮すると見込んでいる。
工事に伴うソーシャルロス低減に貢献、今後は工事の自動化も視野に
道路橋の床版取替工事では、工事に伴うソーシャルロス(交通規制などによる社会的な機会損失)を低減するため、交通規制の期間や範囲を最小限にする技術に加え、近接する交通や周辺施設への安全確保が求められる。
こうした状況を踏まえ、同社はSDRシステムを開発した。2019年には全断面(2車線道路の場合2車線規制)取替、2022年には幅員方向分割(2車線道路の場合1車線規制)取替を対象とした総合実証実験を実施するなど、実工事への適用に向けた準備を進めてきた。
今後は、今回の工事適用で得た知見を活かし、同システムの改良を進めるとともに、床版取替工事のさらなる機械化や自動化を目指す考えだ。
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