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「2024年問題を前に、CCUS活用など建設業の労働環境はどう変革すべきか」芝浦工大 蟹澤教授が提言第5回 建設・測量生産性向上展(2/3 ページ)

2023年から2025年にかけて、建設業界には大きな環境の変化が訪れる。既に建設キャリアアップシステムがスタートし、2022年10月には加入者が100万人を突破。2023年4月には、公共工事でCCUSの準拠が原則必須になった。この他にも、2023年10月にインボイス制度の施行、2024年4月には残業時間の上限規制適用、さらに2025年4月には改正建築基準法も予定されている。

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 蟹澤氏は、「CCUSを建設職人の証として、CCUSの登録がなければ職人を名乗れない、もしくは現場に入場できないようにしないといけない。CCUSは優良な企業の証。業界内外でも、CCUSで評価された良い職人がいる会社として、社会的に評価されるようにならなければいけない」と提言する。

CCUSの認証を持つ人だけを「建設技能者」と呼ぶ
CCUSの認証を持つ人だけを「建設技能者」と呼ぶべき

 建設費が安く抑えられれば良いと考えるのではなく、発注者側の意識改革も求められる。CCUSの認証を持つ職人を使い、法令順守や生産性向上に努める建設会社は、おそらく発注者のSDGsやESGといったトレンドにも合致するはず。蟹澤氏は、こうした建設業界の内情は、一般には知られていないため、業界側が発注者側にも訴えていく必要性を示した。

CCUSを建設職人の証に
CCUSを建設職人の証に

建設業の2024年問題と生産性向上への課題

 建設業を将来につなぐには、担い手を確保することが必須となる。蟹澤氏は、そのために生産性の向上は不可欠だと強く訴求する。生産性の低い仕事は賃金も低いため、たとえ新しい労働者が入ってきても定着しない。

 ここでいう生産性とは、経済的な生産性である「付加価値労働生産性」を指す。労働生産性は、分子を「付加価値額」、分母を「労働者数×労働時間」とする式で表せる。問題なのは、建設業における労働生産性が日本では低く、製造業の半分程度しかないことだ。

 蟹澤氏は、建設業の生産性を上げる上で重要なのは「稼働率」だと指摘する。稼働率は、所定の作業時間のうち、実働時間がどのくらいあるかを示した率。建設業であれば、8時間のうちにどれぐらい動いているかを示すのが稼働率となる。蟹澤氏の調査では、良くて7割、平均すると5割ほどと建設業の稼働率は低い。

建設業の改善には、労働生産性を高めることが必須
建設業の改善には、労働生産性を高めることが必須

 建設業の稼働率が低いのは、作業していない非作業や無駄な作業が多いからだ。特に、内装や設備などの工事で手待ちや手戻りの時間が多く、全体のスケジュールも見通せない。そのため、職長が翌日の作業が可能かどうかを調べるためだけに、現場に来るような非効率なことも頻発している。

各作業間に手待ち、手戻り、移動などによる無駄な時間が存在
各作業間に手待ち、手戻り、移動などによる無駄な時間が存在

 蟹澤氏は、労働生産性が落ちる理由として、「熟練者不足に加え、標準化も足りていない」と話す。建設業の仕事は、同じ会社の中でも水平展開ができない。一つの工事で工期の短縮や高い利益を出せる人材がいても、そのノウハウを他の工事に応用できない側面がある。

 さらに、職種が細分化されすぎている問題もある。建設では、細かい職種ごとに別の会社が請け負っているので、作業間で手待ちが発生しやすい。前の職人の作業が終わらないと次の職人が作業を始められない“直列工程”が前提で、全体として作業の空白時間が生まれやすい。他にも、工程の計画や管理が1日単位であること、請負を前提とし、さらにその構造が重層化していることなど多くの課題がある。

 蟹澤氏は「DXを使って現場を見える化し、無駄な重層化や不確実な情報伝達を改めるべき」と話す。

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