建設業の“月給”が全産業で最大の下げ幅に 前年同月比で3.9%減:2024年問題
厚労省の「毎月勤労統計調査(6月分結果速報)によると、建設業の月給額は56万1499円の前年同月比3.9%減で、全産業で最も大きい下げ幅となった。2024年問題に直面し、慢性的な人材不足に陥っている状況下でも、賃金がそれほど上昇していない実態が明らかになった。
厚生労働省は2023年8月8日、2023年6月分の「毎月勤労統計調査」の結果速報を公表した。
建設業の月給額は、前年同月比3.9%減の56万1499円
調査結果によると、建設業(従業員5人以上の事業所)の月給額(現金給与総額)は、56万1499円で、前年同月比3.9%減となり、全産業の中でも突出した減少幅となった。
基本給や通勤手当など給与のベースとなる「所定内給与」は、同0.1%減の32万8060円。時間外や早朝出勤、休日出勤、深夜勤務などの手当を指す「所定外給与」は、同0.8%減の2万3358円。賞与を含む「特別に支払われた給与」は、産業別で最大の下げ幅となり、同9.5%減の21万81円で、全てが減少となった。
なお、産業全体では月給は同2.3%増の46万2040円で、2022年1月以降は前年同月を毎月上回っている。所定内給与は同1.4%増の25万3554円、所定外給与は同2.3%増の1万8674円、特別に支払われた給与は同3.5%増の18万9812円で全てが増加となった。
「一般労働者」と短時間勤務の「パートタイム労働者」の違いでは、一般労働者は同4%減で59万253円となったのに対し、パートタイム労働者は同1.4%増で13万6383円だった。
また、建設業の月間総実労働時間は、同0.2%増で171.1時間となり、「鉱業、採石業」の173.7時間に次いで長い労働時間だった。労働時間のうち、「所定内労働時間」は同0.1%増で157.9時間となり、「所定外労働時間」は同0.8%増で13.2時間。出勤日数は0.1%増加し、21.0日だった。
産業全体では、総実労働時間は同0.1%増の142.4時間。所定内は同0.2%増の132.4時間、所定外は前年同月と同率の10.0時間となった。
常用雇用と労働異動率は、建設業は279万2000人で同比1.8%増えたものの、入職率は1.15%で同0.09ポイント減少。一方の離職率は0.95%で同0.3ポイント減った。
毎月勤労統計調査全国調査は、日本標準産業分類に基づく16大産業に属する常用労働者5人以上の事業所を対象に、賃金、労働時間、雇用変動を毎月把握することを目的とした調査。調査対象事業所は、常用労働者5人以上の約190万事業所(経済センサス−基礎調査)から抽出した約3万3000事業所で、名目賃金(現金給与総額)や実質賃金、所定内と所定外の労働時間などが把握できる。
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