建設現場の自動巡回からLTE上空利用まで、キャリアの強みで“レベル4解禁”の利用拡大に応えるドコモビジネス:Japan Drone 2023(2/2 ページ)
ドコモグループの法人事業ブランド「ドコモビジネス(docomo business)」は、「Japan Drone 2023|第8回」の展示ブースで、建設をはじめ、農業、物流などの用途で社会実装を進める多様なソリューションを紹介した。
屋外の建設現場でのドローン自動巡回の可能性を確認
NTTコミュニケーションズは、Japan Drone 2023開催に先立つ2023年6月21日、大林組の協力のもと、Skydio Dock for X2と自律飛行型ドローンを用いて、遠隔監視下による「カテゴリーII」※1で、飛行場所を特定した補助者なし目視外飛行を実証し、屋外建設現場の自動巡回に成功したと発表。展示ブースでは、実証実験を紹介するパネルや動画も展示した。
※1 カテゴリーII:無人航空機の飛行リスクに応じたカテゴリーのうち、航空法で国土交通大臣の許可/承認が必要と定められている空域や方法での飛行(特定飛行)で、飛行経路下への立ち入りを管理する措置を講じたうえで行う飛行
これまでにも、建設現場でドローンを活用して、生産性向上を目指す取り組みはされてきた。しかし、多くのドローンがGPSで位置を確認しながら飛行するため、非GPS環境下の橋梁(きょうりょう)下などでは自律飛行が難しく、人が操作していたため、本質的な省人化につながっていなかった。また、自動巡回技術や運用体制は構築の過渡期にあるために、建設現場でのドローンを飛ばすのは、作業員立ち合いのもと、他の作業に支障のない早朝や休憩時間などに行わなければならなかった。
大林組との実証実験では、屋外でのドローンの自動離着陸、自動給電、インターネットでの遠隔監視、Skydioの機体上下に付けられた6つのカメラからの情報を基礎にしたGPSが届かない環境での自動飛行が可能なことを確認した。成功を受けて、商品紹介担当者は「ドローンを使って現場の進捗管理をすることで、大幅な省力化へとつながる」と自信を示す。今後は、取得データの解析までを含め、施工進捗管理のドローンソリューションの提供開始を目指す。
docomo skyのソリューションを紹介する展示。大林組との屋外での実証実験の他に、大林組との屋内非GPS環境下でのドローンの自律飛行と建設現場巡回の有効性を確認する取り組み、JFEエンジニアリングとの屋内プラント施設でのドローン自動巡回の飛行性能や撮影画像の有効性を確認する技術検証について紹介
農業分野でのさまざまニーズの応える「AC101」
農業分野での取り組みを紹介するコーナーには、NTTグループのドローン専業会社NTT e-Drone Technologyが開発した農業用ドローン「AC101」を出品。
AC101は、農業用途での使いやすさを追求した機体で、機体重量は7.6キロと軽量ながら、タンク容量8.0リットル、最大散布幅は5メートル。オリジナルで開発した大容量インテリジェントバッテリーは、最大で2.5ヘクタールの圃場への農薬散布をカバーする。
2023年4月に宮崎で開かれた「G7宮崎農業大臣会合」では、AC101を使って指定した箇所に自動航行し散布するデモフライトを行った。ブース担当者は、「今後はネットワーク型のRTK-GNSSに対応させ、作物の生育状況をより正確に把握する機能開発を進めていきたい」と話す。
ドコモビジネスでは、ドローンとAIを掛け合わせて、ジャガイモの種芋の病理株を検出する事業や牧草地の雑草を検知してピンポイントに駆除用の農薬を散布する事業の実証などに取り組んでいる。
“レベル4飛行”の見据えたモバイル通信を活用したセルラードローン
モバイルネットワークを利用するセルラードローンのコーナーでは、レベル4時代到来を見越して、上空で安全にモバイル通信を利用できるNTTドコモのネットワークサービス「LTE 上空利用プラン」を中心としたソリューションがパネルと映像、ドローンの実機と合わせて提案していた。
展示内容は、医薬品卸業者ケーエスケーと和歌山県立医科大学、NTTコミュニケーションズとが2023年3月に共同実施した災害時を想定したドローンによる医薬品配送の実証実験、ドローン運航管理システム「airpaletteUTM」を手掛けるNTTデータとの共同事業、仏Parrot(パロット)の開発した世界初の量産型コネクテッドドローン(ネット接続型ドローン)「ANAFI Ai」とサイエンスアーツの映像コミュニケーションアプリ「バディコム(Buddycom)」を活用したドローン映像のリアルタイム転送ソリューションの3つ。ドローンによる空の配送から、機体の運航管理、データ活用まで、幅広い領域をドコモビジネスのドローンソリューションがカバーしていることを示す展示内容となっていた。
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