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“新国立競技場”設計BIMの実践がArchicad新機能開発のヒントに!日建設計とグラフィソフトジャパンの挑戦:Building Together Japan 2022(4/4 ページ)
戦略的パートナーシップを締結して、Archicadの機能向上に努めてきた日建設計とグラフィソフトジャパン。その協働の歩みと、新機能開発にもつながる日建設計のBIM活用術を探った。
アトリウムには、照明、日影、日射、空調温熱、吸音などの環境シミュレーションを採用
関係者の合意形成にもBIMを用い、「アトリウムを支える梁は、50メートルくらいのスパンを飛ばす必要があり、梁せいは最大で1.8メートル。大きな梁をアトリウムにかけることになるため、そのまま計画を進めていいかの不安もあった。そこでBIMデータをVRに取り込み、クライアントや施工者など関係者に集まってもらい、梁の見え方や、梁やサッシなどの部材の色などを体験してもらいながら、合意形成につなげた」(恩田氏)。
また、鉄骨を発注する前にファブ工場が描いた3D展開図をもとに、工場と設計者が意見交換して、短期間の工期で精度の高い加工につなげたり、既存建物の手描き図面をBIM化し、構造補強や設備のダクト位置の検討などの改修計画を立案したりすることに、BIMを役立てた。
さらに最大2000人を収容するアトリウムでは、環境面での配慮が重要となる。プロジェクトでは、BIMを利用しながら照明、日影、日射、空調温熱、吸音などの環境シミュレーションを設計に採り入れた。
空調温熱の検討。シミュレーションの結果、夏場では、アトリウムの高さ25mの最上部では、最大で60度くらいの高熱になることが分かった。そこでアトリウムを縦横断面に切って、アトリウム全体ではなく、人が集まる空間だけを冷やす、効果的な空調計画を採用した
最後に恩田氏は、「今後建築が多様化したり、複雑になったりすると、BIM情報の活用推進がさらに求められるだろう。私たちもまた別の活用方法も検討していきたい」との意気込みを口にして、セッションを終えた。
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