BIMモデル内で施工管理のノウハウを“ゲーム感覚”で学べる「現場トレーナー」、ゼネコン8社が開発:BIM
飛島建設などゼネコン8社とコンピュータシステム研究所は、BIMモデルをベースにしたヴァーチャル現場体験型の施工管理教育システム「現場トレーナー」を若手社員の施工管理教育向けで建設会社へ提供している。
飛島建設は、他のゼネコン7社に加え、コンピュータシステム研究所と共同で、BIMモデルを活用したヴァーチャル建設現場内で施工管理のノウハウを学習する「現場トレーナー」を開発した。外販はコンピュータシステム研究所を介してWindows版の出荷開始は2023年7月5日、iOS版は同年8月の予定。
知識教育では不十分な現場での「気付くちから」をゲーム感覚で習得
飛島建設は開発に至った理由について、若手社員への現場教育は、テキストや動画を利用した知識教育だけでは、現場での「気付くちから(問題発見能力)」を十分に学ぶことが難しく、施工中の現場を利用した従来の現場教育でも、現場訪問の段階で「現場経験によって得られる気付くくちから」を習得させることが困難と指摘する。加えて、訪問するための日程などの各種調整と、教育するための環境づくりにも労力を割く必要がある。
実用化までの過程は、2017年から淺沼組でプロトタイプ開発に着手し、その後、ゼネコン8社によるバージョン2の制作と実証実験を経て、2022年4月から現在の9社による本格的なシステム構築がスタートし、2023年5月にPC版とiPad版を順次リリースした。飛島建設と淺沼組以外の参加企業は、青木あすなろ建設、共立建設、佐藤工業、大末建設、高(高ははしごだか)松建設、りんかい日産建設、コンピュータシステム研究所。
現場トレーナーは、短期間で多くの現場を経験させることで、テキストや動画を利用した知識教育だけでは十分とはいえない現場での各種の「気付くちから」を習得させる教育システム。故意に問題点を作りこんだヴァーチャル建設現場で施工管理を体験させることにより、さまざまな用途の現場で起こり得る事故や不具合に対し、未然に気付く経験を与えることを目的としている。
RPGゲームに匹敵する映像クオリティーのバーチャル現場内では、ゼネコン社員のアバターを主人公としたゲームライクなユーザーインタフェースで自由に探索しながら学習を行う。先輩や職長、作業員からのアドバイスやリクエスト、解説資料などを参考に、現場作業の問題点や注意すべき点などのイベントを発見し、60問のクイズを回答しながら学習していくステージと、クイズのように連続してテキストや画像のドリル240問が出題されるステージを用意している。
それぞれの解答に対して「ゼネコン社員としてその状況で取るべき対応」についての解説や資料が提示される。そのため、「どういう状況の場合は、安全や品質の問題に発展するのか」「このような状況の場合は、どのように行動すべきか」など、実際に現場である程度の経験を積まないと取得できない知識や経験(気付くちから)を養える。
また、各社の教育担当者による受講者の学習進捗状況のチェック、進捗が遅れている受講者に実施を促すメール送信、ユーザーや受講するコンテンツ登録を行う機能などのユーザー管理機能も備え、全ての機能はVRで使用する高性能PCを必要とせず、iPadでも動作する。
システム動作環境 | ||
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OS | Windows10/Windows11 | iOS15/iOS16 |
CPU | Intel Core i5同等以上 | 推奨iPad機種:iPad Air 第4/5世代 iPad 第10世代 iPad mini 第6世代 |
メモリ | 16GB搭載(推奨) | |
グラフィックス | オンボードグラフィックス以上 |
現場トレーナーは、開発したゼネコン8社以外にもサブスクリプション契約で提供し、毎年度のアップデートや新しい現場コンテンツの追加に加え、希望する顧客向けの特別な教育コンテンツの開発にも応じる。建設業向けだけではなく、製造業などの他業種向けの教育や教育に限らず様々なコンテンツ制作にも対応する。
なお、サブスクリプションサービスの提供とサポートの窓口は、コンピュータシステム研究所内の事務局が担当する。サービス料金はユーザー数によって変わり、年額は最小単位の10人でWindows版は2万5000円/人×10人。10ユーザーでの契約は、別途で「管理者サポート」5万円/年の契約が必要となる(全て税別)。
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