大学生1000人に「建設業界のイメージ」を野原HDが独自調査 志望学生は15.6%のみ、建設DXの存在感も薄い:調査レポート(2/2 ページ)
野原ホールディングスは、大学生1000人を対象に、建設業界に対するイメージ調査を実施した。調査結果では、志望意向のある大学生はわずか15.6%にとどまり、業界内で活況となっている「建設DX」の存在感も薄い結果となった。
建設業界のマイナスイメージに関しては、「残業・休日出勤が多い」がトップ。次いで「給料が低い」「清潔感がない」の順となり、3K(キツイ・汚い・危険)のうち2つが入り、他産業に比べ待遇面が低いとの印象を抱いている学生が多いと分かった。そのため、「働き方や給与(待遇)」の改善が、学生にとっての魅力的な業界に映る一歩と成り得るだろう。
他にも、7位に「デジタル化が進んでいない」、8位に「グローバル化が進んでいない」というネガティブ要素も挙がった。
逆にプラスイメージについては、最も回答が多かったのは「スキルが身につく」(34.8%)。入社すると一級/二級建築士、技術士、一級建築施工管理技士などの資格取得に補助金や報奨金がでるケースも多く、大学生にとって建設業界は自身のスキルアップをサポートしてくれる業種であることをイメージしていると考えられる。
次点の「社会貢献度が高い」(33.0%)からは、大学生にとって建設業界が生活インフラを支える業種であると認識されていることがうかがえる。
以降、3位に「安定感がある(絶対になくならない)」(30.5%)、4位に「伝統や歴史がある」(24.6%)と続いた。好不況のどちらにも左右されず持続性のある産業のイメージが好感を持って受け止められていると推察される。
9位は「SDGsに取り組んでいる」(10.7%)となり、時流に合わせた環境問題などへ取り組みをしていることの認知もみられた。
学生が魅力に感じる業界にするための検討材料となる志望業界を変える要素の設問では、最多の回答は「待遇や平均給与が良い」(43.4%)。その次が「働き方に自由度」(38.7%)、「景気がよく将来性がある」(35.5%)となり、待遇改善が急務なことが改めて明らかになった。
デジタル化が進んでいると思う分野は何かの問いでは、まだ実務経験はないものの、大学生なりに「建設業界ではデジタル化が進んでいる分野もある」ことは認識している結果となった。上位には、報道などで耳にする機会も多い「建設ロボット」「測量ドローン」「VR/AR/MR」。
一方で、「デジタル化は進んでいないと思う」との回答も一定数見受けられ、建設業界では注目され、政府も推進している「BIM」は4.8%で、学生にはほぼ知られていないというギャップが浮き彫りになった。
デジタル技術の導入の中でも、特にコア技術となるBIMによるデータの利活用で、建設工程全体の生産性向上を実現し、イメージの悪い職場環境を改善する動きを伝えることも、若年層の入職を増やすカギになると考えられる。
まとめ
野原ホールディングス グループCDO 山崎芳治氏は、「志望業界を変える要素の3位に、将来性があるや建設業界は安定感があるとのプラスイメージがあるにもかかわらず、建設業界を志望している学生が15.6%だったことは、業界人として真摯に受け止めたい」とコメント。
また、「(業界では、)BIMによるデータの利活用で建設工程全体の生産性向上を実現する動きが始まっているが、調査結果からは、業界で注目され、政府も推進しているにもかかわらず、BIMは学生が思う『デジタル化が進んでいる領域』として、たった4.8%というほぼ知られていないことが分かった。業界と学生には大きなギャップが見られる」と指摘する。
しかし、「建設業界は変化を続けており、当社でも建設業界のアップデートの実現にむけ、BIM設計〜生産〜施工支援プラットフォームのBuildApp(ビルドアップ)を主軸に、建設DX推進事業を展開中だ。未来を担う若い世代には、この数年で、デジタルで大きく進化する建設業界に期待してもらいたい。これから変わっていく建設業の面白さ、自分たちで変えていこうとするワクワク感を感じられるようになると確信している。そして、10年後には、デジタルで働き方もプロジェクトの進め方も生産性も変わっているアップデートした建設業界になっていることを願う」と期待を寄せた。
<調査概要>
調査時期:2023年2月7〜9日
調査対象:全国の大学1〜3年生
調査手法:ゼネラルリサーチによるインターネット調査
有効回答数:1000人
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