施工計画シミュレーションと重機の遠隔操作システム、大手建機メーカーが提案する建設現場のDX:第7回 ジャパンビルド−建築の先端技術展−(2/2 ページ)
ショベルやクレーンで豊富なラインアップをそろえる大手建設機械メーカーのコベルコ建機。1930年に国産第1号の建機となる電気ショベル「50K」を世に送り出して以来、脈々と受け継がれてきたチャレンジ精神を胸に、施工計画ができるシミュレーションソフト「K-D2 PLANNER」とリモートワーク支援システム「K-DIVE」の2つのサービスで、建設現場のデジタル化時代に新たな道を切り開く。
重機の遠隔操作で建設現場の働き方を刷新
ブースで紹介したもう1つのサービスは、13トン級以上の油圧ショベルを対象とした遠隔操作機能と、ヒト/重機の稼働データ活用する仕組みを兼ね備えたリモートワーク支援システム「K-DIVE」。
K-DIVEの遠隔操作機能を説明すると、オフィスなど工事現場とは別の場所に用意した重機の操縦席を模したコックピットに座り、正面にある7台のモニターを見ながら、現場にある建機を遠隔操作する。コックピットの手元モニターで別の建機に切り替えれば、1台のコックピットから複数の建機をコントロールできる。
コックピットから遠隔地の工事現場までは専用の光回線(遠距離)で、ラストワンマイル(現場)はWi-Fiを使って、操作情報を重機に送信する。若干の通信遅延はあるものの、「人が感じられない程度」(担当者)だという。今回ブースでは、東京ビッグサイトと神戸・広島の2現場とを結んで、デモ実演が実施されていた。
コックピットには、遠隔重機に搭載したジャイロセンサーから振動や傾き、重機のエンジン動作音や機械動作音、ホーンなどをフィードバックする機構が搭載されており、遠隔から現場をリアルに感じられ「オペレーターのワクワク感を損なわない」(担当者)仕様となっている。また安全性に配慮して、コックピットの非常停止ユニットと、携帯できる非常停止ユニットの2つを用意。利用可能なオペレーターを判別する顔認識機能や作業中のよそ見や姿勢を検知する機なども搭載されている。
オペレーターの操作履歴や遠隔重機の稼働情報、遠隔重機に設置したメインカメラの映像などのデータは、クラウドのMicrosoft Azureやダッシュボードにアップロードして保存。それらを分析することで、業務の効率化や作業手順の共有化、若手オペレーターへの操作指導などに役立てられる。さらに情報をもとにしたコンサルティングサービスも用意されている。
コベルコ建機は、K-DIVEを導入することで、3つの価値が提供を目指す。すなわち、人が危険な現場に立ち会わなくても工事ができることによる「安全性の向上」、保存したさまざまなデータを分析・活用することによる「生産性の向上」、そして場所や時間を問わず働ける環境をつくることでの「多様な人材の活用の可能性」の3つだ。
担当者は、「これまでも重機の稼働情報を収集するサービスはあったが、当社のサービスはヒトの情報まで収集できるのが特徴。ブースでの反応から、サービスへの期待の高さを感じている」との手応えを口にする。また、現場に行かなくてもオフィスで重機を操作できるという新しい働き方については「“きつい、きたない、危険”の建設業に対するイメージ改善につながり、人手不足に悩む業界の起爆剤になるかもしれない。女性や障がいを持っている方など、これまで働き手になりにくかった方の雇用につながる可能性がある」と持論を展開した。
K-DIVEのサービス提供の開始は、第2回建設DX展の初日となる2022年12月5日。サービス利用料は月額50万円(税別)。2023年度は目標契約件数40件達成を目指す。
建機というものづくりから、それを使用するヒトを起点としたサービスへと展開し、現場のDXを進めるコベルコ建機。今後の動向にも注目だ。
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