日揮グローバルが現地調達した材料で“基礎型枠”を3Dプリント 型枠施工の期間が2分の1に短縮:デジタルファブリケーション
日揮グローバルは、宮城県石巻市で遂行中のバイオマス専焼発電設備建設現場で、建設現場で入手が容易なセメントや骨材などの一般的な材料を用い、3Dプリンタで基礎型枠を屋外で造形した。従来工法に比べ、型枠施工の期間が2分の1に端短縮されたという。
日揮グループの海外EPC事業会社日揮グローバルは、2021年10月から国内EPC事業会社の日揮が宮城県石巻市で遂行中のバイオマス専焼発電設備の建設現場に、デンマークのCOBOD International A/Sのガントリー型コンクリート系建設用3Dプリンタを設置し、建設工事で3Dプリンタの本格的な導入に向けた実証に取り組んできた。2022年12月14日には、現地調達した一般的な材料で屋外造形した基礎型枠を適用した他、さまざまな成果が得られたと公表した。
現地調達した一般的な材料で屋外造形した基礎型枠を適用
これまで建設工事の3Dプリンタ活用は、専用に開発された特殊なプレミックスモルタルが使用されていたが、日揮グローバルは建設現場で入手が容易なセメントや骨材などの一般的な材料を用い、現地で混練したモルタルおよびコンクリート製の基礎型枠を屋外で造形可能なことを実証した。2022年6月には、宮城県石巻市で遂行中のバイオマス専焼発電設備建設現場で、同社によると国内企業で初めて、プラントの配管支持構造物に適用した。
3Dプリンタで造形した型枠を適用することで、従来工法の現場での型枠組立と脱型作業が不要となり、型枠施工の工期短縮につながる。実証では、従来工法と3Dプリント型枠の同時施工を行った結果、従来工法では埋め戻し作業を含め16日間を要したのに比べ、検証を通じて明確になった課題を改善したうえで、3Dプリンタで造形した型枠を適用することにより、2分の1となる8日間で型枠施工を完了できるめどが立ったという。
また、実証にあたり、助勢作業員として派遣した若手社員を対象に、3Dプリンタなどの新技術に精通したエンジニアを育成し、1週間程度の3Dプリンタ操作に関するトレーニングを実施した。日揮グローバルは、特殊かつ専門的なトレーニングを受けた人員に依存することのない3Dプリンタの導入を目指している。
なお、2022年6月末に宮城県石巻市で遂行中のバイオマス専焼発電設備での実証は終了し、同年7月からは茨城県に3Dプリンタの設置場所を移して、現地調達できる一般的な材料を用いたオンサイトプリンティング(屋外環境における造形)の有効性評価を継続して実施している。
今後の計画は、現場実証を継続して実施していくことで、将来の施工現場でのオンサイトプリンティングによる省人化や工期短縮、さらには海外現場でも現地調達可能な材料によるコストダウンや海外調達のリスクヘッジを図っていく。
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