ZEH対応の投資用アパート普及拡大へ オリックス銀行が個人投資家に貸付金利0.05%優遇:ZEH(2/2 ページ)
オリックス銀行は、年間の一次消費エネルギー収支量をゼロ以下にした集合住宅「ZEH-M」の普及に向け、市場の活性化を後押しする。現状では、ほとんどZEH-M化が進んでいない投資用物件に着目し、開発事業者との連携を強化していく姿勢を打ち出した。
ZEH-M仕様の投資用アパートで金利0.05%を優遇
オリックス銀行では既に、ZEH-M仕様による投資用マンションに対して、開発事業者には資金融資の金利を0.1%、物件を購入する個人投資家には0.05%と、それぞれ優遇措置をとっている。今回から、投資用アパートについても、個人投資家に金利を0.05%優遇する方針を打ち出した。第1弾となる名古屋の「Nearly ZEH-M」基準を満たす物件ではオリックス銀行が融資、フィリックスが施工、湘建が販売をそれぞれ担い、3社協働での取り組みとなっている。
優遇対象となる、環境配慮型物件の基準は、マンションが住棟単位でZEH-M、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Oriented。住戸単位でZEH、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Oriented。一方のアパートは、ZEH-M、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedに加え、BELS★×5。
入居者がZEHを物件探しの条件とする時代を見据え
政府では、2021年10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画で、「2030年度以降に新築される住宅について、ZEH基準の水準の省エネルギー性能の確保」と、「2030年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置」という目標を掲げている。
しかし、2020年度における新築戸建て住宅のZEH比率(戸数ベース、フィリックス調べ)は約16%で、注文住宅に限定すると約24%を占めているものの、集合住宅のZEH-M比率(着工面積ベース、同)は約1.2%にとどまっている。とりわけ、賃貸を目的とした投資用集合住宅に至ると、開発コストの上昇による利回りへの影響からほとんど広まっていないという。
2022年9月29日開催した記者説明会の席上、オリックス銀行 専務執行役員 村岡久氏は、「環境問題という社会課題を考えた際に、対応に大幅な遅れが生じている賃貸住宅も、ZEH化に向けた取り組みが必須だ」と投資用不動産における環境配慮型物件の普及を後押しする重要性を強調した。そのために、課題となっているZEH化に伴うコスト増を金融面から支援し、マーケットに供給されるZEH仕様の投資用不動産の増加につなげたいと続けた。
「今回の取り組みが先行事例となり、投資用アパートの普及も進んでいけば、そう遠くない将来に、いずれは入居者がZEHを物件探しの条件にする時代も到来すると確信している」と述べた上で、そのときを見据え、開発事業者や賃貸/販売業者と足並みをそろえて普及を促進していくと抱負を述べた。
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