コンクリート打設時の先送りモルタルが不要な工法を開発、大林組:導入事例
大林組は、エコスティックとともに、圧送整流プラグとハイブリッド配管を使用することで、コンクリート打設時の先送りモルタルが不要になる「ノンモルタル工法」を開発した。今後、両社は、ノンモルタル工法を建設現場へ導入し、脱炭素社会の実現と建設業の生産性向上に貢献する。また、エコスティックは、ハイブリッド配管とハイブリッド配管を装備した特殊ポンプ車「ジェシカ」の販売とサポートを行う。
大林組は、エコスティックとともに、圧送整流プラグ※1とハイブリッド配管※2を使用することで、コンクリート打設時の先送りモルタルが不要になる「ノンモルタル工法」を開発したことを2022年9月20日に発表した。
※1 圧送整流プラグ:強力な摩擦抵抗と完璧な遮断力をもつゴム製のボール。配管内に設置することで管内の流れを調整し、流動性を保ったままコンクリートを圧送することが可能。
※2 ハイブリッド配管:配管全ラインが同一内径で統一され段差がなく、2種類の継手の組み合わせにより揺れを防ぎ、伸縮しない配管。
廃棄モルタルの回収・保管、産業廃棄物としての処分費用が全て不要に
通常、ポンプ車により圧送を行うコンクリート打設では、配管が詰まることを防ぐために、モルタルを先行材として使用している。しかし、利用した先送りモルタルは、全てが産業廃棄物として処分されており、大林組の試算によれば廃棄されるモルタルは国内の建設現場全体で年間60万立方メートルに達する。
さらに、生コンクリートは、水、セメント、砂、砂利などが含まれる混合体で、先送りモルタルなしで圧送を行うと、小さくて軽い砂利のみが早く進み、先頭部分で生コンクリートが脱水して流動性が失われ、配管が詰まる。
一方、原料であるセメントの生産で生じるCO2排出量は、大林組の試算によれば年間23万トンに上る他、先送りモルタルの準備と廃棄にも手間がかかっている。
そこで、大林組とエコスティックは、圧送整流プラグとハイブリッド配管を使用し、先送りモルタルを使わずコンクリート打設が行えるノンモルタル工法を開発した。
ノンモルタル工法は、生コンクリートを圧送するハイブリッド配管の先頭部に圧送整流プラグを搭載することで、プラグの強い配管抵抗により疑似的に配管内を満水状態にし、水、セメント、砂、砂利の流れが制御され、配管が詰まることを防げる。
活用する圧送整流プラグには、強い遮断力があり、先行水を大量に入れても後から圧送されるコンクリートに混入することがない。加えて、内面が平滑化されたハイブリッド配管を用いることで、接続部の伸縮やブームの揺れを抑えられるため、配管内が詰まらず高品質なコンクリートを打設可能。
ノンモルタル工法を導入する利点は、コンクリート打設時の先送りモルタルをなくすことで、廃棄モルタルが減らせ、建設業界における脱炭素化に貢献する他、先送りモルタルを利用しないため、モルタルの材料費や廃棄モルタルの回収・保管、産業廃棄物としての処分費用が全て不要になる点。
また、ハイブリッド配管に圧送整流プラグを搭載することで、先送りモルタルを投入せずにコンクリートの投入が行えるため、数十秒で打設を始められるだけでなく、約200メートルの配管打設で従来の方法と比較して、打設のスタートを約30分早くできる。なお、先送りモルタルの準備作業や廃棄で必要な運搬作業などにかかる時間もなくなる。
既に、大林組は、福島県いわき市の生コン工場敷地内でノンモルタル工法の実証実験を実施している。その結果、品質や施工性に問題がないことを確認し、開削道路トンネル建設工事に適用した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- VR技術を活用した施工管理者向け教育システムを発売、大林組と積木製作
大林組と積木製作は、鉄筋配筋の不具合をゲーム感覚で探せる施工管理者向け体験型教育システム「VRiel」を販売している。販売にあたり、VRielで体験できる部位(柱、梁、スラブ)や難易度のバリエーションも増やして、誰でも容易に使えるシステムに仕上げた。 - AIを利用したコンクリート打設の数量・時間管理システムを開発、安藤ハザマ
安藤ハザマは、Avintonジャパンが保有するエッジAI技術を利用して、コンクリート打設の数量と時間の管理を自動で行うシステムを開発した。今後は、上下水道施設、ポンプ場、水門など、一回当たりのコンクリート打設量が多い工事に、新システムを展開していく。また、安藤ハザマが保有する「打上り高さ・打重ね時間自動測定システム」「生コン車の位置情報確認システム」「締固め自動判定システム」などと連携させ、総合的な生コン管理システムに発展させることで、施工管理のより一層の高度化と省力化を目指す。 - 三井住友建設がコンクリート打設システム「自動 de 覆工」を実現場で初適用
三井住友建設は、岐阜工業と共同開発した覆工コンクリート打設システムSMC-Tunnelingシリーズ「自動 de 覆工」の展開を本格化している。 - 鹿島ら、トンネルの覆工コンクリート打設を完全自動化
鹿島建設は、岐阜工業、シンテックと共同で、山岳トンネル工事における打設配管システムを開発し、覆工コンクリート打設を完全自動化した。省人化、省力化を図り、従来工法と同等のコストを実現する。