日本初、大林組が液化水素の冷熱を建物の空調などに利用する実証に着手:導入事例
大林組は、岩谷産業が兵庫県尼崎市で保有する中央研究所と岩谷水素技術研究所で、建物の空調エネルギーなどへ液化水素冷熱を利用する日本初の実証を進めている。
大林組は、岩谷産業とともに、国内有数の水素エネルギー研究開発拠点である岩谷産業中央研究所と岩谷水素技術研究所で、建物の空調エネルギーなどへ液化水素冷熱を利用する日本初の実証に着手することを2022年8月31日に発表した。
液化水素から発生する冷熱を空調用冷水や実験機器用冷却水用として活用
液化水素は、水素ガスをマイナス253度の極低温にして液化させた状態で、圧縮水素ガスに比べ密度が高く大量の貯蔵や輸送に適していることから、輸送効率が求められる産業用途や水素ステーションなどに供給されている。
加えて、液化水素を利用する際には、主に気化器を用いて常温のガスに戻すが、マイナス253度の冷熱はそのまま大気に放散される。この冷熱を無駄なく利用する技術開発は、設備機器などの冷却に必要なエネルギー削減につながるため、脱炭素社会の実現を後押しする重要な取り組みとなる。
今回、実証を開始する中央研究所と岩谷水素技術研究所では、カーボンニュートラル社会の実現に向け、「見せる研究開発拠点」を目指している。一方、大林組は、中央研究所と岩谷水素技術研究所や水素ステーションの設計・施工を担当しただけでなく、水素による発電や温排熱の利用にも取り組んできた。
さらに、上記の知見を生かし、冷熱を建物に利用するためのシステム構築する他、岩谷産業とパートナーシップを組み、環境やエネルギーの課題を解決する手段として期待される水素の利活用に向けて、多種多様な共同研究や実証を進めている。
今後は、両研究所で、併設する水素ステーションに供給する液化水素から発生する冷熱を、空調用冷水や実験機器用冷却水用として氷蓄熱※1するなど、大林組はさまざまな冷熱活用の手段、方法、用途を岩谷産業と共同開発し実証していく。
※1 氷蓄熱:電力の需給調整用に空調用冷水で氷を作って蓄熱し、時間をずらして融解して冷房に利用するシステム。
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